中小企業や商店でホームページを担当されている皆さん、こんな悩みはありませんか?
「離脱率が80%を超えていて、上司から『なぜホームページから問い合わせが来ないんだ』と詰められている」「改善したい気持ちはあるけれど、何から手を付けていいか分からない」「予算も人手も限られた中で、確実に成果を出さなければならない」
私は戦略的ウェブ制作工房エル・タジェールの代表として、ウェブ解析士の資格を持ち、これまで70社以上の中小企業のホームページ改善を支援してきました。その中で、離脱率80%から32%への大幅改善など、数多くの成功事例を生み出してきた経験があります。
中小企業のWeb担当者の皆さんが抱える悩みは、大企業とは異なる特有の課題があります。限られた予算と人材、そして「すぐに結果を出してほしい」というプレッシャーの中で、どのように効果的な改善を進めていけばよいのか。本記事では、そうした現実的な制約を踏まえた上で、実際に成果につながる離脱率改善の方法をお伝えします。
デジタル庁デジタル推進委員としての活動や、SEO検定1級の知識も活かしながら、データに基づいた改善アプローチの重要性を、専門用語を使わずに分かりやすく解説していきます。
第1章:離脱率の基礎理解
離脱率とは何か?直帰率との違いを理解しよう
まず、離脱率について正しく理解しましょう。離脱率とは、あるページを最後にホームページから離れてしまった人の割合のことです。計算式で表すと「そのページから離脱した人数 ÷ そのページを見た人数 × 100」となります。
よく混同されがちなのが「直帰率」との違いです。直帰率は「最初に見たページだけを見てすぐに離れてしまった人の割合」を指します。一方、離脱率は「どのページからでも最終的に離れてしまった人の割合」を表します。
例えば、お客様がトップページから入って、サービス紹介ページを見て、最後に料金ページを見て離れた場合、料金ページでの離脱となります。この場合、トップページとサービス紹介ページでは離脱は発生せず、料金ページでのみ離脱がカウントされます。
中小企業が知っておくべき離脱率の目安
ページの種類によって、適正な離脱率は大きく異なります。中小企業のホームページでよくあるページタイプ別に目安をお示しします。
ランディングページでは70%から90%の離脱率が一般的です。これは、広告などから直接訪れた人が、そのページで情報を得て満足するか、または興味がないと判断して離れるためです。
ブログ記事やお役立ちコンテンツでは50%から70%程度が目安となります。読者が疑問を解決できれば自然に離れるため、ある程度高い離脱率は正常です。
サービス紹介ページでは40%から60%程度を目標にしましょう。お客様により詳しい情報や料金について知りたいと思ってもらえるような構成にすることが重要です。
問い合わせフォームについては30%以下が理想的です。わざわざフォームまで来てくださったお客様に離脱されるのは非常にもったいないことです。
GA4での離脱率確認方法

現在主流となっているGoogleアナリティクス4(GA4)では、以前のバージョンと異なり、離脱率という指標が直接表示されません。しかし、「探索」機能を使うことで離脱率を確認できます。
GA4の管理画面左側にある「探索」をクリックし、「空白(自由形式)」を選択します。次に「指標」の部分で「離脱数」と「表示回数」を追加し、「ディメンション」でページタイトルやページパスを設定します。これにより、各ページの離脱数と表示回数が分かり、離脱率を計算できます。
定期的にこのデータを確認し、離脱率の変化を追跡することで、改善施策の効果を測定できるようになります。
GA4の取り扱いが難しい場合には、エルタジェールにご相談ください。
第2章:改善すべきページの見極め方
優先的に改善すべきページの特徴
限られた時間と予算の中で最大の効果を得るためには、改善すべきページを正しく見極めることが重要です。
①アクセス数が多く離脱率も高いページ
まず最優先で改善すべきなのは、アクセス数の多いページで離脱率が70%を超えているページです。多くの人が訪れているのに離脱率が高いということは、それだけ多くの潜在的なお客様を逃していることになります。
②問い合わせや購入につながるページ
次に重要なのは、問い合わせや購入につながる導線上にあるページです。例えば、サービス紹介から料金ページ、料金ページから問い合わせフォームといった流れの中で、離脱率が高いページがあれば優先的に改善する必要があります。
③滞在時間が短いページ
また、滞在時間が30秒未満で離脱率が高いページも要注意です。これは、お客様がページを開いた瞬間に「求めている情報がない」と判断して離れている可能性が高いためです。
改善する必要がないページも理解しよう
一方で、離脱率が高くても問題ないページもあります。
サンクスページ(「お問い合わせありがとうございました」などの完了ページ)は、離脱率が90%を超えていても正常です。お客様の目的が達成された後のページなので、離脱されることは自然な流れです。
他社サイトへの紹介ページも同様です。提携企業やおすすめサービスを紹介するページでは、外部サイトへ移動してもらうことが目的なので、高い離脱率は想定内です。
お役立ちコンテンツやブログ記事で、読者の疑問が完全に解決された場合の離脱も問題ありません。滞在時間が十分長く、ページを最後まで読んでから離脱している場合は、良質なコンテンツとして機能している証拠です。
中小企業における改善優先度の決め方
中小企業では、すべてのページを同時に改善することは現実的ではありません。効果の高さと実装の難易度を考慮した優先度付けが重要です。
①高い効果が期待でき、かつ簡単に実装できる改善を最優先に取り組みましょう。例えば、ページの表示速度改善や、分かりやすいボタンの設置などが該当します。
②効果は高いが実装に時間やコストがかかる改善は、計画的に取り組む必要があります。サイト全体の構造見直しや、大幅なデザイン変更などがこれにあたります。
③効果は限定的だが簡単にできる改善は、他の作業に余裕がある時に実施します。細かい文言の調整や、画像の差し替えなどが該当します。
第3章:離脱率が高くなる5つの根本原因
原因1
ファーストビューでの期待値ギャップ
ホームページを訪れたお客様が最初に目にする部分を「ファーストビュー」と呼びます。ここでお客様の期待と実際のページ内容にズレがあると、即座に離脱されてしまいます。
実際に私が支援した製造業のBtoB企業では、専門用語だらけのトップページが原因で、訪問者の80%が3秒以内に離脱していました。改善として「製造業の皆様へ」という親しみやすい表現を前面に出し、業界特有の課題を分かりやすい言葉で表現したところ、離脱率を45%まで改善することができました。
お客様は検索結果のタイトルや広告を見て、ある程度の期待を持ってページを訪れます。その期待に応える内容が最初の画面で伝わらなければ、すぐに別のサイトへ移動してしまいます。
原因2
モバイル対応不備による離脱
現在、ホームページへのアクセスの82%がスマートフォンからです。にもかかわらず、まだ多くの中小企業のホームページでスマートフォン対応が不十分なケースが見られます。
画面からはみ出してしまう文字、小さすぎてタップできないボタン、崩れたレイアウトなどがあると、お客様は使いにくさを感じて即座に離脱します。Googleの調査によると、表示が崩れているページでは54%のユーザーが即座に離脱するというデータもあります。
スマートフォンで自社のホームページを実際に確認し、文字が読みやすいか、ボタンがタップしやすいか、画像が適切に表示されているかをチェックすることが重要です。
原因3
ページ表示速度の問題
ページの読み込み時間が3秒を超えると、53%のユーザーが離脱するというGoogleのデータがあります。中小企業のホームページでよく見られる問題として、高解像度の写真をそのまま掲載することで、ページが重くなってしまうケースがあります。
私が支援したある小売店では、商品写真のファイルサイズが大きすぎることが原因でページの表示に8秒もかかっていました。画像を適切に圧縮し、不要なプラグインを削除することで表示時間を2秒に短縮したところ、離脱率が30%改善されました。
特にスマートフォンユーザーは、移動中など通信環境が不安定な状況でアクセスすることも多いため、できる限り軽量なページ作りを心がける必要があります。
原因4
導線設計の失敗パターン
お客様がホームページ内で迷子になってしまうような設計も、高い離脱率の原因となります。
よくある失敗例として、「次に何をすればいいか分からない」状態があります。サービス内容を読んだお客様が「詳しく知りたい」「料金を確認したい」「問い合わせしたい」と思った時に、該当するボタンやリンクが見つからないと、諦めて離脱してしまいます。
また、問い合わせボタンが小さすぎたり、ページの一番下にしかなかったりすると、お客様に気づいてもらえません。重要なボタンは、ページの複数箇所に適切なサイズで配置することが大切です。
パンくずリスト(現在見ているページがサイト内のどの位置にあるかを示すナビゲーション)がないことも、お客様を迷子にさせる原因となります。
原因5
コンテンツと検索意図のミスマッチ
お客様が検索して訪れる際には、明確な目的や知りたい情報があります。その期待に応えるコンテンツが提供されていない場合、即座に離脱されてしまいます。
例えば、「地域名 + サービス名」で検索して訪れたお客様に対して、全国一律の情報しか提供していない場合や、「料金」について調べている人に対して、具体的な金額が記載されていない場合などが該当します。
自社のホームページにどのような検索キーワードで訪れているかをGoogle Search Consoleで確認し、それらのキーワードに対して適切な答えが提供できているかを見直すことが重要です。
競合他社と比較して、情報の充実度や分かりやすさが劣っている場合も、お客様は「他のサイトの方が参考になりそう」と判断して離脱してしまいます。
第4章:即効性の高い改善策12選
最優先で取り組むべき技術的改善
1. ページ表示速度最適化
ページの表示速度改善は、最も効果が高く、比較的短期間で実現可能な施策です。
まず、自社のホームページの現在の表示速度を確認しましょう。GoogleのPageSpeed Insightsという無料ツールにURLを入力することで、表示速度のスコアと改善点を確認できます。
最も効果的なのは画像の最適化です。デジタルカメラで撮影した写真をそのまま使用すると、ファイルサイズが大きすぎてページが重くなります。TinyPNGなどの無料ツールを使用して画像を圧縮しましょう。品質をほとんど劣化させることなく、ファイルサイズを50%以上削減できることも珍しくありません。
WordPressを使用している場合は、使っていないプラグインを削除し、キャッシュ機能を有効にしましょう。多くのレンタルサーバーでは、管理画面からキャッシュ機能を簡単に設定できます。
2. モバイルファースト最適化
スマートフォンでの表示を最優先に考えた改善を行いましょう。
まず、自分のスマートフォンで自社のホームページを確認してください。文字が小さすぎて読みにくくないか、ボタンが小さすぎてタップしにくくないか、横にスクロールしないと全体が見えない部分がないかをチェックします。
ボタンのサイズは、指で押しやすいように縦横44ピクセル以上にすることが推奨されています。また、文字サイズは16ピクセル以上にすることで、多くのユーザーにとって読みやすくなります。
3. 404エラーページ対策
存在しないページにアクセスした際に表示される404エラーページも、離脱率に大きく影響します。
標準的な404ページではなく、自社らしいデザインで「お探しのページが見つかりません」というメッセージと共に、トップページや主要ページへのリンクを設置しましょう。これにより、エラーページに到達したユーザーの一部を他のページに誘導できます。
また、定期的にサイト内のリンク切れをチェックし、修正することも重要です。
UI/UX改善で離脱を防ぐ
4. CTAボタン最適化
CTA(Call To Action)ボタンとは、お客様に行動を促すボタンのことです。「お問い合わせ」「資料請求」「今すぐ購入」などが該当します。
ボタンの色、文言、配置によって、クリック率は大きく変わります。私が実施したテストでは、ボタンの色を青からオレンジに変更しただけで、クリック率が2.3倍になったケースがあります。
文言についても、「詳細はこちら」のような曖昧な表現よりも、「無料で相談する」「今すぐ見積もりを取る」のような具体的なメリットを示した方が効果的です。
配置については、ページの右上よりも中央付近の方がクリックされやすい傾向があります。ただし、業種や内容によって最適解は異なるため、可能であればA/Bテストを実施して検証しましょう。
5. ファーストビュー改善
ページを開いて最初に目に入る部分(ファーストビュー)は、離脱率に最も大きく影響する要素です。
「5秒ルール」という考え方があります。お客様は5秒以内に「このページは自分に役立つか」を判断すると言われています。そのため、5秒以内に以下の3点が伝わるような構成にしましょう。
一つ目は「何の会社・サービスか」です。会社名やサービス名だけでなく、どのような業界で何をしている会社なのかを明確にしましょう。
二つ目は「お客様にとってどのようなメリットがあるか」です。商品やサービスの特徴ではなく、お客様の問題解決にどう役立つかを伝えます。
三つ目は「次に何をすればいいか」です。資料請求なのか、電話なのか、来店なのか、お客様が取るべき行動を明確に示します。
6. ナビゲーション・メニュー最適化
お客様がサイト内で迷わないよう、分かりやすいナビゲーションを設置します。
メインメニューの項目は5〜7個程度に絞り、それぞれの項目名は専門用語を避けて一般的な言葉を使いましょう。「ソリューション」よりも「サービス内容」、「コンセプト」よりも「当社の特徴」といった具合です。
スマートフォンではハンバーガーメニュー(三本線のマーク)を使用することが一般的ですが、このマークだけでなく「メニュー」という文字も併記すると分かりやすくなります。
パンくずリストも重要です。「トップページ > サービス案内 > 料金表」のように、現在のページがサイト全体のどの位置にあるかを示すことで、お客様が迷子になることを防げます。
コンテンツ改善による回遊率向上
7. 内部リンク最適化
お客様をサイト内の他のページに誘導する内部リンクを効果的に配置しましょう。
関連する内容のページへのリンクを自然な形で文中に組み込みます。例えば、サービス紹介ページでは料金ページへ、料金ページでは実績紹介ページへのリンクを設置します。
ブログ記事の場合は、記事の終わりに関連記事を自動で表示する機能を追加しましょう。WordPressであれば、多くのプラグインでこの機能を簡単に実装できます。
ただし、リンクを多く設置しすぎると、お客様がどれをクリックすればいいか迷ってしまいます。1つのページにつき3〜5個程度の重要なリンクに絞ることが効果的です。
8. EFO(フォーム最適化)
お問い合わせフォームでの離脱を防ぐための改善をEFO(Entry Form Optimization)と呼びます。
最も効果的なのは入力項目の削減です。本当に必要な項目だけに絞り、可能な限り3項目以内に収めましょう。多くの企業では「お名前」「電話番号またはメールアドレス」「お問い合わせ内容」の3項目で十分な場合が多いです。
住所が必要な場合でも、郵便番号を入力すると自動で住所が入力される機能を導入すると、お客様の負担を大幅に軽減できます。
エラーメッセージも重要です。「入力に誤りがあります」という曖昧なメッセージではなく、「電話番号はハイフンなしで入力してください」のような具体的な修正方法を示しましょう。
9. コンテンツ構成の見直し
ページ全体の構成を見直し、お客様が求める情報に素早くアクセスできるようにします。
見出し(H1、H2、H3タグ)を適切に使用して、情報を整理しましょう。特に長いページでは、目次を設置してクリックすると該当箇所にジャンプできるようにすると便利です。
重要な情報は、ページの上部に配置します。料金や営業時間、連絡先など、多くのお客様が知りたがる情報は、スクロールしなくても見える位置に置きましょう。
付加機能による離脱防止
10. 離脱防止ポップアップ
お客様がページを閉じようとした瞬間にポップアップを表示して、離脱を防ぐ技術があります。
ただし、この機能は使い方を間違えると嫌がられる可能性があります。単なる宣伝ではなく、お客様にとって本当に価値のある情報(限定割引、お役立ち資料など)を提供する場合のみ使用しましょう。
また、表示頻度も重要です。同じユーザーに何度も表示されないよう、一度表示したら一定期間は表示しない設定にしましょう。
11. 検索機能・サイト内検索最適化
サイト内の情報量が多い場合は、検索機能を設置すると便利です。
お客様が探している情報をキーワードで検索できるようにすることで、目的のページに素早くたどり着けます。検索ボックスは、サイトの上部など目立つ位置に配置しましょう。
検索結果ページも重要です。該当する情報が見つからない場合でも、関連するページや人気のあるページを表示することで、完全な離脱を防げます。
12. 信頼性向上要素の強化
お客様に安心してサイトを利用してもらうための要素を充実させます。
会社概要ページでは、設立年、所在地、電話番号、代表者名などの基本情報を明記しましょう。写真があると、より親近感を持ってもらえます。
お客様の声や実績、受賞歴などがあれば積極的に掲載します。第三者からの評価は、信頼性向上に大きく貢献します。
プライバシーポリシーやセキュリティ対策についても明記し、お客様が安心して個人情報を提供できる環境を整えましょう。
第5章:業界別・ケーススタディ
製造業BtoBサイトの離脱率改善事例

従業員50名の金属加工業A社のケースをご紹介します。
同社のホームページは、専門用語が多用されており、業界外の人には理解が困難な内容でした。その結果、訪問者の88%が3秒以内に離脱するという深刻な状況でした。
改善施策として、まず業界特化のランディングページを作成しました。「自動車部品メーカー様へ」「医療機器メーカー様へ」といった具合に、お客様の業界別にページを分けて、それぞれの業界が抱える課題を分かりやすい言葉で表現しました。
次に、専門用語にマウスを乗せると解説が表示されるポップアップ機能を導入しました。これにより、専門知識がない担当者でも内容を理解できるようになりました。
さらに、加工工程の写真を多数掲載し、文字だけでは伝わりにくい技術力をビジュアルで表現しました。
これらの改善により、6ヶ月後には離脱率を88%から42%まで改善することができました。月5万円の外部委託費用で実現した成果です。問い合わせ数も3倍に増加し、売上向上にも直結しました。
地方小売店ECサイトの事例

創業100年の老舗和菓子店B社のケースです。
同社では伝統的な和菓子をオンラインでも販売していましたが、スマートフォン対応が不十分で、モバイルからの離脱率が78%に達していました。売上も低迷しており、抜本的な改善が必要でした。
改善策として、スマートフォンを最優先に考えた全面的なサイトリニューアルを実施しました。商品写真は和菓子の美しさが伝わるよう高品質なものに変更し、商品の説明も「創業100年の職人が心を込めて作る」といった情緒的な表現を加えました。
地域密着性をアピールするため、地元の季節の話題や、店舗での職人の作業風景なども積極的に掲載しました。これにより、単なるECサイトではなく、地域に根ざした老舗の魅力を伝えることができました。
配送方法についても改善し、地域内であれば当日配送、全国でも翌日配送を可能にしました。
結果として、モバイルからの離脱率は78%から35%まで改善し、全体の売上も20%向上しました。初期投資50万円、月3万円の運用費用でしたが、売上向上により投資回収期間は6ヶ月程度でした。
サービス業ランディングページの事例

ハウスクリーニング会社C社の事例です。
同社では広告からランディングページに誘導していましたが、コンバージョン率が0.8%と非常に低い状況でした。ページ分析の結果、サービス内容は説明されているものの、お客様にとってのメリットが伝わりにくい構成になっていることが判明しました。
改善として、ストーリー型の構成に変更しました。「汚れが気になるけれど、忙しくて掃除する時間がない」というお客様の悩みから始まり、「プロの技術で短時間できれいに」という解決策、「清潔な空間で家族が笑顔に」という未来像を描く流れにしました。
Before/After写真も大幅に増やし、ビフォーアフターの違いを視覚的に分かりやすく表現しました。キッチン、お風呂、エアコンなど、場所別の清掃例を豊富に掲載しました。
料金体系についても透明化し、「○平方メートルで○○円」という明確な表示に変更しました。追加料金の可能性がある項目についても事前に明記し、お客様が安心して申し込めるようにしました。
これらの改善により、コンバージョン率は0.8%から3.2%に向上しました。月2万円の改善作業費用で、大幅な成果改善を実現できました。
士業事務所サイトの事例

税理士事務所D社のケースです。
同社のホームページでは、サービス内容は詳しく説明されているものの、相談申し込みまでの離脱率が85%という高い数値でした。分析の結果、お客様が「本当にこの事務所に相談して大丈夫だろうか」という不安を解消できないまま離脱していることが分かりました。
改善策として、まずFAQコーナーを大幅に充実させました。「初回相談は本当に無料ですか」「どんな些細なことでも相談できますか」「他の事務所との違いは何ですか」など、お客様が抱きがちな不安や疑問に対して丁寧に回答しました。
相談事例についても詳しく掲載しました。個人情報に配慮しながら、「このような状況のお客様が、このような解決策で問題を解決できました」という具体例を豊富に紹介しました。
段階的な情報提供も工夫しました。いきなり相談申し込みではなく、「まずは資料請求」「メルマガ登録」「オンライン説明会参加」など、お客様が取りやすい小さなステップを用意しました。
これらの改善により、相談申し込み率が300%向上しました。外部委託は利用せず、事務所のスタッフが月10時間程度の作業時間を投入することで実現した成果です。
第6章:中小企業のための改善ロードマップ
- 第1週:緊急対応(予算0円で実施可能)
- まず最初の1週間で、予算をかけずにできる緊急対応を実施しましょう。
PageSpeed Insightsを使用して、自社ホームページの表示速度をチェックしてください。スコアが50以下の場合は、早急な改善が必要です。明らかに大きすぎる画像ファイルがあれば、TinyPNGなどの無料ツールで圧縮しましょう。
スマートフォンでの表示確認も重要です。文字が小さすぎて読めない、ボタンが小さすぎてタップできない、レイアウトが崩れているなどの問題があれば、最低限の修正を行います。
問い合わせボタンやメニューが分かりにくい場合は、色や大きさ、位置を調整して見つけやすくしましょう。
404エラーページが標準的なものになっている場合は、自社らしい内容に変更し、主要ページへのリンクを追加します。
- 第1ヶ月:基盤整備(予算5-10万円)
- 1ヶ月目は、改善の基盤となるツールの導入と基本的な最適化を行います。
まだ導入していない場合は、Google Analytics 4(GA4)を設定しましょう。正確なデータ分析のため、適切な設定が重要です。
Microsoft Clarityなどの無料ヒートマップツールも導入します。お客様がページのどの部分をよく見ているか、どこでクリックしているかが分かり、改善のヒントが得られます。
サイト全体の画像を見直し、圧縮や最適化を行います。この作業だけでも、表示速度は大幅に改善される場合があります。
基本的な内部リンクの整備も行います。関連するページ同士を適切にリンクで結び、お客様がサイト内を回遊しやすくします。
- 第2-3ヶ月:本格改善(予算10-20万円)
- 2ヶ月目からは、より本格的な改善に取り組みます。
主要ページでA/Bテストを実施します。ボタンの色や文言、画像の配置などを変更したバージョンを作成し、どちらがより効果的かを検証します。
コンテンツ構成の見直しも行います。お客様が求める情報が適切な順序で配置されているか、分かりやすい見出しが付けられているかを確認し、必要に応じて修正します。
問い合わせフォームの最適化(EFO)にも取り組みます。入力項目の削減、エラーメッセージの改善、自動入力機能の追加などを実施します。
定期的なレポート体制も構築します。週次または月次で離脱率やコンバージョン率の変化を確認し、改善効果を測定できるようにします。
- 第4-6ヶ月:継続最適化(予算月5万円)
- 4ヶ月目以降は、データに基づいた継続的な最適化を行います。
GA4やヒートマップツールのデータを定期的に分析し、新たな改善ポイントを発見します。離脱率の高いページや、コンバージョンに貢献していないページを特定し、優先順位を付けて改善します。
新規コンテンツの追加も計画的に行います。お客様からよく寄せられる質問をFAQページに追加したり、事例紹介を充実させたりします。
競合他社の分析も定期的に実施し、自社サイトの差別化ポイントを強化します。
ROI(投資対効果)の測定も重要です。改善にかけた費用と、それによって増加した売上や問い合わせ数を比較し、効果的な投資ができているかを確認します。
外部委託vs内製の判断基準
改善作業を自社で行うか、外部に委託するかの判断も重要です。
内製をおすすめするケース
WordPressの基本操作ができる担当者がいる、月20時間以上の作業時間を確保できる、データ分析に興味を持って取り組める人材がいる場合です。
外部委託をおすすめするケース
技術的な問題で作業が止まることが多い、作業時間が月10時間未満しか確保できない、3ヶ月以内に確実な成果が必要な場合です。
外部委託する場合の相場は、月5万円から20万円程度です。重要なのは金額よりも実績と相性です。同業種での改善実績があり、定期的な報告とコミュニケーションが取れる業者を選びましょう。
部分的な委託も有効です。技術的な作業は外部に委託し、コンテンツ作成や日常的な更新は内製で行うといった使い分けも考えられます。
第7章:データ分析に基づく継続改善
GA4を活用した離脱率分析の実践
- 継続的な改善のためには、正確なデータ分析が欠かせません。GA4を使った具体的な分析方法をご説明します。
- まず、離脱率の高いページを特定しましょう。GA4の「探索」機能を使用し、「離脱数」と「表示回数」を指標として設定します。これにより、各ページの離脱率を計算できます。特に表示回数が多いにも関わらず離脱率が高いページは、改善の優先度が高いと言えます。
- ユーザーフローの分析も重要です。お客様がどのような経路でサイト内を移動し、どこで離脱しているかを把握することで、問題のあるページや導線を発見できます。
- セグメント別の分析も実施しましょう。デバイス別(パソコン・スマートフォン・タブレット)、流入元別(検索・SNS・広告・直接アクセス)、時間帯別などで離脱率を比較することで、より具体的な問題点が見えてきます。
例えば、スマートフォンからの離脱率だけが著しく高い場合は、モバイル対応に問題がある可能性があります。特定の時間帯の離脱率が高い場合は、サーバーの処理能力やネットワークの問題が考えられます。
ヒートマップツールでの詳細分析
- GA4では分からない、ページ内での詳細なユーザー行動を把握するために、ヒートマップツールを活用しましょう。
- Microsoft Clarityは無料で利用でき、中小企業にとって非常に有用です。導入は簡単で、タグをサイトに設置するだけで利用開始できます。
- クリックヒートマップでは、お客様がページ内のどの部分をクリックしているかが色で表示されます。重要なボタンがクリックされていない場合は、位置やデザインの見直しが必要です。
- スクロールヒートマップでは、お客様がページをどこまで読んでいるかが分かります。重要な情報が書かれている部分まで到達していない人が多い場合は、ページの構成を見直す必要があります。
- セッションレコーディング機能では、実際のお客様の操作を動画で確認できます。どこで迷っているか、どのような操作をしているかが具体的に分かるため、改善のヒントが得られます。
A/Bテストによる改善効果検証
- 改善施策の効果を科学的に検証するために、A/Bテストを実施しましょう。
- Google Optimizeは2023年にサービス終了となったため、現在はWordPressのプラグインや他のツールを使用します。Nelio A/B TestingやVK A/B Testingなどのプラグインが利用できます。
- テストを実施する際は、適切な期間とサンプル数の設定が重要です。一般的には、最低2週間、各バージョンに100以上のアクセスがある状態でテストを実施します。
- 統計的有意性の判断も重要です。95%の信頼度で有意差があることを確認してから、勝利バージョンを採用しましょう。単純に数値が良いだけでなく、統計的に意味のある差であることを確認する必要があります。
継続的なPDCAサイクル構築
- 改善活動を継続するために、定期的なレポートとPDCAサイクルを構築しましょう。
- 月次レポートでは、離脱率、滞在時間、コンバージョン率などの主要指標の変化を記録します。前月比、前年同月比での比較により、改善効果を把握できます。
- 改善優先度マトリクスを定期的に更新し、次に取り組むべき施策を明確にします。効果の高さと実装の難易度を考慮して、最も効率的な改善策から実施します。
- 競合他社のベンチマーク分析も定期的に実施しましょう。競合サイトの改善状況を確認し、自社が遅れをとっていないかをチェックします。
- ROI測定も重要です。改善にかけた費用(人件費含む)と、それによって増加した売上や問い合わせ数を比較し、投資効果を定量化します。これにより、今後の予算配分を適切に決定できます。
まとめ
離脱率の改善は、中小企業のホームページ運営において極めて重要な取り組みです。しかし、闇雲に改善を行うのではなく、データに基づいた段階的なアプローチが成功の鍵となります。
本記事でお伝えした12の改善策は、いずれも実際の事例に基づいた実証済みの方法です。重要なのは、自社の状況に合わせて優先順位を付け、継続的に取り組むことです。
私が70社以上の中小企業を支援してきた経験から言えることは、「完璧を目指さず、継続的な改善を重視する」ことの重要性です。小さな改善の積み重ねが、やがて大きな成果につながります。
中小企業だからこそできる機動性を活かし、お客様の声に耳を傾けながら、データドリブンな改善活動を続けていけば、必ず成果は現れます。大手企業に負けない、お客様に愛されるホームページを一緒に作り上げていきましょう。
まずは無料で利用できるGA4とMicrosoft Clarityを導入し、現状の離脱率を正確に把握することから始めてください。そして、本記事でご紹介した改善策の中から、自社にとって最も効果が高そうなものを選んで実践してみてください。
ご不明な点やより詳しいアドバイスが必要でしたら、ウェブ解析士として、そして中小企業のデジタル成長パートナーとして、いつでもお手伝いさせていただきます。データに基づいた継続的な改善により、皆様のビジネスがさらに発展することを心より願っております。