「ウェブサイトからのお問い合わせが減ってきている」──多くの中小企業が抱えるこの課題に、データドリブンなアプローチで挑んだリニューアル事例をご紹介します。東京・葛飾でトートバッグ製造・生地販売を手がけるhide-aci工房様と、戦略的ウェブ制作工房エル・タジェール代表の宮崎が、リニューアルの舞台裏を語りました。
「作って終わり」のサイトでは、もう通用しない
──hide-aci様、まずリニューアルを検討されたきっかけを教えていただけますか?
hide-aci様: 当工房は帆布を中心とした生地販売と、オリジナルトートバッグのOEM生産、個人向けのオーダーメイド製作の3つの事業を展開しています。以前からウェブサイトはあったのですが、ここ数年でお問い合わせや注文が徐々に減ってきていることに危機感を感じていました。
正直なところ、「サイトはあればいい」くらいに考えていた部分もあったんです。でも、競合他社がどんどんウェブに力を入れている中で、このままでは取り残されると感じました。
宮崎: 初めてご相談いただいた時、hide-aci様は「コンバージョンが下がってきている」と明確に課題を認識されていましたね。実は、これがとても重要なポイントなんです。多くの企業様は「なんとなく調子が悪い」という感覚的な不安を持っていても、具体的に何が問題なのか分からないままなんです。
hide-aci様: そうですね。ただ、具体的に何をどう改善すればいいのかは、まったく分からない状態でした。
データが明かした「見えない課題」

──最初に取り組まれたのは、データ分析だったそうですね。
宮崎: はい。私たちエル・タジェールでは、必ずGoogle Search ConsoleとGoogle Analytics 4を設置して、徹底的な現状分析から始めます。これは医者が診察前に検査をするのと同じで、データという「客観的事実」なくして、適切な処方箋は書けないんです。
hide-aci様のサイトを分析して最初に驚いたのが、平均掲載順位が41位だったことです。
hide-aci様: 41位というのは、つまり……?
宮崎: 検索結果の4ページ目くらいですね。ほとんどのユーザーは1ページ目、せいぜい2ページ目までしか見ません。つまり、検索結果には表示されているけれど、実質的に「見つけてもらえない」状態だったんです。
hide-aci様: それは衝撃でした。うちはBtoBもBtoCも両方やっているので、「トートバッグ OEM」とか「帆布 販売」とか、色々なキーワードで探されているはずなのに……。
宮崎: まさにそこが課題でした。BtoB顧客とBtoC顧客では、検索するキーワードも、求めている情報もまったく違います。企業の担当者は「小ロット対応」「納期」「品質管理体制」を知りたい。一方、個人のお客様は「価格」「デザイン例」「注文方法」を知りたい。
以前のサイトは、この2つのニーズが混在していて、どちらのお客様にとっても「欲しい情報がすぐに見つからない」構造になっていたんです。
hide-aci様: 言われてみれば、確かに。自分たちでは「全部載せておけば親切」だと思っていたのが、逆効果だったんですね。
ユーザー視点で再構築した情報設計
──具体的にどのような改善策を実施されたのでしょうか?
宮崎: 大きく3つの柱で進めました。
まず第一に、導線の最適化です。トップページから、BtoB向けの「OEM/PB生産」、BtoC向けの「オーダーメイド製作」、そして「生地販売」という3つの事業への導線を明確に分けました。訪問者が迷わず、自分の目的に合ったページへスムーズに進めるようにしたんです。
hide-aci様: あの時、宮崎さんが何度も「お客様の立場で考えましょう」と言っていたのが印象的でした。
宮崎: そうなんです。私たちはつい「自分たちが伝えたいこと」を優先してしまいがちですが、重要なのは「お客様が知りたいこと」なんです。
第二に、コンテンツの再構築です。hide-aci様の強みである「60種類以上の豊富な生地」「東京・葛飾の国内生産による高品質」「小ロットから対応可能な柔軟性」といった差別化要素を、お客様のメリットとして分かりやすく表現し直しました。
hide-aci様: 「国内生産」も、ただ「国内で作っています」ではなくて、「だから品質が高い」「だから安心」という価値として伝えていただきましたね。
宮崎: そして第三に、SEO技術的な最適化です。検索エンジンがサイトの内容を正しく理解できるよう、見出しタグの適切な使用、画像の説明文(altテキスト)の最適化、読み込み速度の改善、スマートフォン対応など、技術的な基盤を整えました。
hide-aci様: 正直、最初は「SEOって怪しいんじゃないか」と思っていたんです(笑)。でも、宮崎さんが一つひとつ丁寧に説明してくださって、「これはお客様のための改善なんだ」と理解できました。
キーワード戦略:「探される言葉」で語る
──特に効果があった施策はありますか?
宮崎: キーワード戦略の見直しは大きかったですね。以前のサイトでは、業界の専門用語や社名での検索には対応していましたが、実際にお客様が困った時に検索する言葉への対策が不十分でした。
例えば、「小ロット トートバッグ 製作」「オリジナルバッグ 東京」「帆布 OEM」といった、実際の需要に基づくキーワードです。
hide-aci様: 「お客様が使う言葉」と「私たちが使う言葉」は違う、ということですよね。「帆布」という言葉を知らない人は「キャンバス生地」と検索するかもしれないし、「OEM」を知らない人は「オリジナルバッグ 製作」と検索する。
宮崎: まさにその通りです。お客様の検索意図を深く理解して、それに応えるコンテンツを作ることが、現代のSEOの本質なんです。
数字が証明した成果

──リニューアル後、どのような変化がありましたか?
hide-aci様: まず実感したのは、お問い合わせの質が変わったことです。以前は「とりあえず聞いてみました」という感じのお問い合わせも多かったのですが、リニューアル後は「サイトを見て、ぜひお願いしたいと思いました」という、具体的な相談が増えました。
宮崎: それは、適切な情報を適切なタイミングで提供できている証拠ですね。データで見ると、成果は明確に表れています。
平均掲載順位は41位から19.8位まで上昇しました。検索結果の4ページ目から2ページ目への大幅な改善です。
hide-aci様: あの時、宮崎さんが報告してくださった時は本当に嬉しかったです。
宮崎: さらに、トップページ、OEMページ、生地販売ページ、それぞれで表示回数と滞在時間が大幅に増加しました。特に重要なのは、ページ滞在時間が延びたこと。これは、訪問者が「このサイトには欲しい情報がある」と感じて、じっくり読んでくれている証拠なんです。
複数ページを閲覧する割合も向上しました。つまり、トップページだけ見て帰るのではなく、「OEMページも見てみよう」「生地販売のページも確認しよう」と、サイト内を回遊してくれるようになったんです。
hide-aci様: 数字で見ると、改めて「変わったんだな」と実感しますね。
製造業特有の課題──専門性と分かりやすさの両立
──製造業のサイトならではの難しさもあったのでは?
hide-aci様: そうですね。私たちの仕事は、生地の種類、縫製の技術、品質管理など、専門的な要素が多いんです。でも、それを専門用語で説明すると、お客様には伝わらない。
宮崎: 製造業や工房系のサイトでは、この「専門性と分かりやすさの両立」が常に課題になります。技術力の高さは企業の誇りですが、それを「お客様の言葉」で翻訳しないと、価値が伝わらないんです。
hide-aci様の場合、「60種類以上の生地」という事実を、「お客様の理想の質感・色・耐久性に必ず出会える選択肢の豊富さ」というメリットとして表現しました。「国内生産」も、単なる製造場所ではなく、「品質の安心」「迅速な対応」「トレーサビリティ」という価値として訴求したんです。
hide-aci様: 代表の顔写真とメッセージを入れることも、最初は恥ずかしかったんですが(笑)、宮崎さんが「顔が見えることが信頼につながります」と。
宮崎: 特にBtoB取引では、「誰が作っているのか」「どんな想いで作っているのか」が重要な判断材料になります。hide-aci様の「長く愛されるものづくり」への想いを、しっかり伝えることができたと思います。
継続的改善こそが、本当の成果を生む

──リニューアル後も、定期的に効果測定をされているそうですね。
宮崎: はい。私たちは「作って終わり」ではなく、リニューアル後も月次でデータを確認し、改善提案をさせていただいています。ウェブサイトは生き物のようなもので、市場環境や競合の動き、お客様のニーズの変化に応じて、継続的に調整していく必要があるんです。
hide-aci様: 最近では、季節によって検索されるキーワードが変わることも分かってきました。
宮崎: そうなんです。例えば、イベントシーズン前は「ノベルティ トートバッグ」の検索が増えるとか、卒業シーズンには学校関連の需要が高まるとか。そういったトレンドを先読みして、タイムリーなコンテンツを発信していく戦略も立てています。
今後は、お客様の課題解決に役立つコンテンツマーケティングにも力を入れていく予定です。「オリジナルバッグ製作で失敗しないための5つのポイント」とか、「生地選びで重要な3つの要素」といった実用的な記事を増やしていきます。
hide-aci様: お客様に役立つ情報を発信することが、結果的にhide-aci工房の認知度向上にもつながるということですね。
宮崎: まさにその通りです。「売り込み」ではなく、「お客様の課題解決のパートナー」として価値を提供し続けることが、長期的な信頼関係を築く鍵なんです。
中小企業のウェブ担当者へのメッセージ
──最後に、同じような課題を抱える中小企業・商店のウェブ担当者の方々へ、メッセージをお願いします。
hide-aci様: 私自身、ITやウェブには詳しくなかったんですが、宮崎さんが一つひとつ丁寧に説明してくださって、「データで現状を把握することの大切さ」を学びました。感覚や勘だけではなく、数字で事実を見ることで、適切な判断ができるようになります。
ウェブサイトのことで悩んでいる経営者の方は、まず現状を正確に把握することから始めてみてください。
宮崎: 中小企業や商店の皆様にお伝えしたいのは、「ウェブサイトは投資」だということです。作って終わりではなく、継続的に改善していくことで、確実に成果につながります。
Google Search ConsoleやGoogle Analytics 4といった無料ツールでも、十分に深い分析が可能です。重要なのは、「測定→分析→改善」のサイクルを回し続けること。
私たちエル・タジェールは、単にサイトを作るだけでなく、お客様のビジネス目標達成のパートナーとして伴走します。hide-aci様のように、データに基づいて着実に成果を積み上げていく企業様を、これからも全力でサポートしていきます。
hide-aci様: これからも、宮崎さんと一緒に、さらなる成長を目指していきたいと思います。
宮崎: こちらこそ、hide-aci様の成長に貢献できることを、心から嬉しく思います。ありがとうございました。
■ hide-aci工房について
東京・葛飾を拠点に、帆布・トートバッグの製造販売、生地販売を手がける。国内生産にこだわり、小ロットから大量生産まで柔軟に対応。
https://hide-aci.com/
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