昨日、妻が出演した西日暮里の「アルハンブラ」で開催された中谷泉先生の教室の発表会に行ってきました。コロナ禍を経て、5年ぶりにフラメンコのステージを目にしたのですが、踊り手たちの熱い情熱がひしひしと伝わり、まるでスペインにいるかのような錯覚を覚えるほど心が揺さぶられました。日本にいながら異国の文化であるフラメンコがこれほどまでに私たちの心を捉えるのはなぜか、その理由を探ってみたくなりました。

1. フラメンコと日本文化に通じる精神性

フラメンコと日本文化の間には意外な共通点があり、これが多くの日本人を引きつける一因といえます。フラメンコでは「Con la tierra（大地と）」という感覚が重要視され、踊り手が地に根を張るような「重み」ある表現が求められます。中谷泉先生もまた、この「地に足をつける」感覚を重視しており、舞台でもその安定感と重厚感が際立っていました。これは日本の武道や茶道で重んじられる「地に根を張る」という精神とも共鳴し、共感を呼んでいるのです。

特に中谷先生は、相撲の四股を取り入れることで大地と一体になる感覚をフラメンコに活かしており、日本人が持つ「大地への敬意」を表現に昇華しています。この「大地に根差す」という感覚は日本人にとってもなじみ深く、フラメンコに自然に心が惹かれる理由の一つといえます。

2. 自己表現と日本人の自己探求

フラメンコは個人的で強い感情表現が求められるダンスです。日本人は文化的に感情を抑えることが多いですが、フラメンコではステージ上で喜怒哀楽のすべてを全身で表現することができます。このことが、自己探求や自己成長を求める多くの日本人にとって大きな魅力です。

中谷先生も初めからフラメンコに熱中したわけではなく、イスラエル・ガルバンというアーティストの衝撃的なパフォーマンスに触れることでその魅力を深く理解したそうです。表現の幅と深さに感銘を受けたことで、フラメンコを自己探求の手段とし、情熱を注ぐようになったのです。このような自己表現の場としてのフラメンコは、日本人にとってとても魅力的に映ります。

3. 努力と成長を実感できる芸術

フラメンコは高度な技術が求められ、習得には地道な練習が必要です。努力が実を結び、達成感が得られる点が日本人に響く理由の一つでしょう。中谷先生も育児中で限られた時間を活かし、四股や体幹トレーニングを取り入れながら質の高い練習を工夫しています。このような「努力と成長」の積み重ねが実感できる芸術として、フラメンコは日本人にとって魅力的な存在です。

4. 趣味としての多様性と一体感

フラメンコは年齢を問わず楽しむことができ、多様な価値観を持つ人々が集まります。中谷先生も四股、フットサル、DIYなどさまざまな趣味を持ち、フラメンコの新しい側面を探求しています。フラメンコの「愉快でエネルギッシュ、そして真摯に取り組む」姿勢は、日本人にとって共鳴しやすい文化的特徴と通じているのかもしれません。

また、フラメンコは「共鳴」や「連帯感」を生む場でもあります。今回の発表会でも、出演者たちが一丸となって観客と一体感を共有し、会場全体が一つのリズムで包まれているのを感じました。仲間との一体感を味わえる場としてのフラメンコは、日本人が求める「つながり」や「連帯感」を得られるものなのです。

5. 中谷泉先生の探求心と「Con la tierra」の精神

中谷先生が長年探求してきた「Con la tierra（大地と）」という概念は、日本人がフラメンコを通じて目指す理想的な姿を表しています。フラメンコの動き一つ一つに重みを与え、大地と一体になる感覚を持つ踊りは、日本の相撲で力士が四股を踏み、大地に根ざすような精神と重なります。中谷先生はこの精神を今も体現し、フラメンコの深みを追求し続けています。

そして、2024年からは落合の新しいスタジオ「Estamos（エスタモス）」の管理人として、さらなるフラメンコへの探求と共有に力を注ぐ決意とのこと。これをきっかけに、フラメンコを通じた自己探求や成長の場が提供され、多くの日本人が新たな心の旅に出るきっかけとなるでしょう。