昨日は、門前仲町で定期的に開かれている「シェアする落語」に行ってきました。
「シェアする落語」は、単に落語を聞くだけではなく、落語の面白さを観客同士で共有し、楽しむという新しい形の落語会です。今回は橘家文吾さんの見事な話芸、そして会場全体に広がるあたたかい雰囲気を感じることができました。この記事では、橘家文吾さんのプロフィールと共に、「シェアする落語」についてご紹介していきます。
橘家文吾さんのプロフィール
橘家文吾さんは、江戸落語の伝統を受け継ぐ若手の落語家として、近年注目を集めています。橘家一門に所属し、古典落語を中心に活躍していますが、彼の魅力はその演目の一つ一つに自分らしい解釈とエネルギーを込め、観客を笑わせ、感動させるところにあります。
また、文吾さんの落語は、古典の枠にとどまらず、現代的な要素や新しいアプローチを取り入れており、幅広い世代から支持されています。特に、彼の滑らかで情感豊かな語り口は、観客を一瞬で物語の世界に引き込みます。文吾さんの演じる人物たちは生き生きとしており、まるで舞台上に本物の人々がいるかのような錯覚を覚えます。
師匠は三代目橘家文蔵さん。文吾さんは総領弟子となります。
ちなみに、トップ画像のお写真は、会場にあった絵葉書?ブロマイド?です。
「シェアする落語」とは?
「シェアする落語」は、その名の通り、落語の面白さを「シェアする」ことを目的とした落語会です。毎回、門前仲町の深川東京モダン館で行われています。
このユニークなイベントは、主催者である四家正紀さんが中心となり、「落語の面白さを、あなたとシェアしたい。そして、あなたにも落語の面白さをシェアしてほしい」というコンセプトのもと開催されています。2012年から開催されており、今回で37回目となります。
通常の落語会では、観客は黙って落語を聞き、終わればそのまま帰るという形式が多いですが、「シェアする落語」はそれとは異なり、観客と演者が一緒に落語の魅力を語り合い、体験を共有する場を提供しています。特に面白いのは、演目の間に行われるシェアタイムです。
今回の演目
今回の「シェアする落語」では、橘家文吾さんが3つの古典落語を披露してくれました。それぞれの演目が、異なる魅力を持つストーリーで、観客を楽しませました。
- 磯の鮑(いそのあわび)
「磯の鮑」は、町内の若者たちが集まり、与太郎を女郎買いにそそのかす噺です。彼らは、女郎買いには師匠がいて、礼儀や振る舞いを教わるものだと与太郎に嘘をつき、手紙を持たせて浅草の「師匠」に向かわせます。与太郎は騙されているとも知らず、頑なに教えを請い、師匠は仕方なく遊びの作法を伝授。与太郎は意気揚々と教え通りに女郎の前で振る舞うものの、肝心のセリフを「磯の鮑」ではなく「伊豆のわさび」と言い間違えてしまいます。 - 夢金(ゆめきん)
「金の亡者」熊蔵は、雪の降る夜に侍と娘を舟に乗せることになります。侍は娘が百両を持ち出し家出したことを明かし、熊蔵に娘を殺して金を奪う手伝いを持ち掛けます。しかし、熊蔵は人殺しを拒否し、逆に侍を脅して金を山分けしようと提案。舟を使って侍を中洲に置き去りにし、娘を大家の家に送り届けると、大金百両を報酬として受け取りますが、実はすべて夢だった。。。 - 井戸の茶碗(いどのちゃわん)
正直者のくず屋清兵衛は、貧しい娘から仏像を200文で買い受け、若い侍の高木に300文で売ります。仏像を洗った高木が中から50両を発見し、清兵衛に返却を依頼しますが、仏像の持ち主卜斎も「金は受け取れぬ」と断ります。困った清兵衛は家主に相談し、50両を三人で分けることに。その際卜斎が高木に渡した茶碗が「井戸の茶碗」という名器と判明し、細川の殿様が300両で購入。再びこの300両の分け方で揉めるかと思いきや、卜斎はその金で娘を高木に嫁がせることを決め、話は円満にまとまる。
橘家文吾さんは、登場人物それぞれの性格を見事に演じ分け、観客を物語の世界に引き込みました。
いずれの噺も最後にすっきりとした結末が待っており、会場は拍手喝采でした。
シェアタイムとSNSシェア
「シェアする落語」の魅力の一つは、演目の間にあるシェアタイムです。この時間には、主催者の四家正紀さんと演者の橘家文吾さんが舞台上で対話し、演技の裏話や落語家としての経験、さらにはプライベートな一面まで披露してくれます。文吾さんの人柄や、落語にかける情熱が伝わるこのトークタイムは、落語ファンにとって非常に貴重な時間です。
さらに、このシェアタイム中には、通常の落語会と異なり、写真撮影が推奨されています。観客は演者の写真を撮り、それをSNSでシェアすることが推奨されています。これにより、「シェアする落語」は単なる鑑賞体験にとどまらず、観客が自身の体験をSNSを通じて広めることで、落語の魅力を多くの人に伝えることができるのです。
写真を撮ってSNSにアップすることで、友人やフォロワーにも落語の魅力を伝えることができるので、落語に馴染みのない人たちにも興味を持ってもらう良いきっかけになります。また、トークタイム中のリラックスした雰囲気や演者の素の表情が写真に収められることで、落語会の楽しさがよりリアルに伝わります。
シェアする落語の新しい試み
「シェアする落語」は、伝統的な落語の枠を超えて、現代的なコミュニケーション手段を取り入れることで、落語ファンだけでなく、新たな観客層にもアプローチしています。落語会の中で観客と演者が交流できる場が設けられているため、初めて落語に触れる人でもリラックスして楽しむことができるのも魅力です。
さらに、トークタイムを通じて演者の人柄や舞台裏のストーリーに触れることで、落語の世界がさらに広がります。観客はただ物語を聞くだけでなく、演者と対話し、深い理解を得ることができるため、より充実した体験が得られます。
次回は2025年1月立川寸志さんです
「シェアする落語」は、演目だけでなく、トークタイムやSNSでのシェアを通じて、観客が主体的に参加できる体験型のイベントとなっています。これにより、伝統的な落語の枠を超え、多くの人々にその魅力を伝えることができるのです。
次回第38回シェアする落語は立川寸志さんです。
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