プレゼンを終えて感じた旅行会社様のリアルな課題
先日、旅行会社様を対象に「観光業界に必要なサイトコンテンツ」というテーマでプレゼンテーションを行いました。データドリブンなアプローチで実践的な戦略をお話しさせていただいたところ、参加者の皆様から非常に前向きな反応をいただくことができました。
しかし、プレゼン後の質疑応答で印象的だったのは、「施策をやりたいが人手が足りない」という声でした。これは旅行業界で働く多くの方が抱える現実的な課題だと感じています。
そこで今回は、プレゼンでお話しした内容を詳しく解説するとともに、限られたリソースの中でも効果的に取り組める実践方法をお伝えします。
旅行業界の歴史的転換点:2024年のデータが示す急成長
驚異的な需要回復を裏付ける最新統計
観光庁が2025年6月に公表した「宿泊旅行統計調査(2024年・年間値(確定値))」によると、2024年の延べ宿泊者数は6億5,906万人泊を記録しました。これは2019年比で+10.6%、前年比で+6.7%という驚異的な数値です。
特に注目すべきは外国人宿泊者数で、1億6,447万人泊(前年比+39.7%)と大幅に増加し、全体に占める外国人比率は25.0%に達しています。
コロナ禍からの急激な回復軌道

2019年を100%とした需要推移を見ると:
- 2020年:10%(コロナ禍による激減)
- 2021年:30%(緩やかな回復開始)
- 2022年:120%(回復加速)
- 2023年:220%(急激な回復)
- 2024年:270%(さらなる成長で過去最高)
この急速な回復は、お客様の旅行に対する価値観や行動パターンを根本的に変化させています。
現実を直視:旅行会社が直面する深刻な課題
OTA依存の深刻化

現実を見ると、課題は深刻です。日本旅館協会の調査によると、全宿泊予約の約45%がOTA経由となっています。さらに観光庁のデータでは、国内宿泊旅行の54%がインターネット専門予約サイトを利用しているという状況です。
この数字が示すのは、多くの旅行会社様で直接予約の比率が低下し、OTA依存が深刻化しているという現実です。
顧客行動の根本的変化
加えて、お客様の行動も大きく変化しています:
- 団体旅行から個人旅行への志向シフト
- モノ消費からコト消費(体験重視)への変化
- 安心・安全への関心の高まり
これらの変化に対応するためには、従来の商品カタログ的なサイトから脱却し、お客様の新しいニーズに応える戦略的なコンテンツ作りが急務となっています。
解決策:旅行会社サイトに必要な5つのコンテンツ戦略
1. 専門性を活かした提案コンテンツ
旅のプロだからこそ提供できる価値を前面に出しましょう。
具体的な取り組み例:
- 現地スタッフによる最新レポート
- 地元の人だけが知る穴場スポット紹介
- 季節ごとのおすすめルート提案
- 天候や混雑状況を考慮したプランニング
実装のポイント: OTAでは得られない専門的な情報を定期的に発信することで、お客様にとっての価値を明確に差別化できます。
2. 信頼・安心を伝える情報
特にコロナ後は安心・安全への関心が高まっています。
必須要素:
- 旅行業登録番号の明示
- 感染対策への取り組み
- 24時間サポート体制の詳細
- 実際のお客様の声と写真
- 添乗員や企画担当者のプロフィール
効果的な表現方法: 抽象的な表現ではなく、具体的な取り組みや数値で安心感を表現することが重要です。
3. 差別化する体験提案
旅行会社ならではの価値を訴求します。
差別化ポイント:
- オリジナルの体験プログラム
- 添乗員同行の価値とメリット
- 地元ガイドとの特別な連携
- 参加者限定の特典や体験
- グループならではの特別料金
訴求のコツ: 価格競争に巻き込まれるのではなく、「ここでしか得られない価値」を明確に打ち出すことが重要です。
4. 予約を促進する仕組み
スムーズな予約体験でコンバージョン率を向上させます。
最適化要素:
- リアルタイムの空席状況表示
- 透明性のある料金体系
- 簡潔で分かりやすい予約フロー
- 適切なタイミングでのCTA配置
- モバイル完全対応
重要なポイント: お客様が迷わず、安心して予約完了できる導線設計が予約率向上の鍵となります。
5. リピート・口コミを生むコンテンツ
長期的な顧客関係を構築します。
継続的エンゲージメント施策:
- 旅行後のフォローアップメール
- 次回旅行の季節提案
- お客様参加型のコンテンツ(写真投稿など)
- 会員限定の特典情報
- 旅行体験談の共有プラットフォーム
効果: 一度きりの関係で終わらせない仕組みを作ることで、LTV(顧客生涯価値)の向上と口コミによる新規獲得が期待できます。
実践アクション:限られたリソースでも始められる5つのステップ
プレゼン後に「人手が足りない」というお声をいただきましたが、すべてを一度に実行する必要はありません。優先順位を付けて段階的に取り組むことが成功の鍵です。
Phase 1:現状把握(優先度:最高)
①コンテンツ監査の実施
所要時間:1-2週間 担当者:1名
- 現状のサイトを客観的に分析
- 強み・弱みの明確化
- 競合他社との比較分析
- Google Analyticsデータの詳細分析
具体的な手順:
- 主要ページの訪問者数、滞在時間、離脱率を確認
- 予約完了までのフローで離脱が多いページを特定
- 競合3社のサイト構成、コンテンツを調査
- 自社の強みとなりうる要素を抽出
Phase 2:低コスト・高効果施策(優先度:高)
②お客様の声の収集・活用
所要時間:1ヶ月で仕組み構築 担当者:1名
- 旅行後アンケートシステムの構築
- 写真・体験談の掲載許可取得
- 定期的なフィードバック収集
実装のコツ: 既存のお客様から始めて、徐々にシステム化していくことで負担を軽減できます。
③スタッフの専門性可視化
所要時間:2週間 担当者:各スタッフ30分ずつ
- 添乗員や企画担当者のプロフィール作成
- 現地視察レポートの定期発信
- 専門知識を活かした記事執筆
効果的な進め方: まず1-2名のプロフィールから始めて、反応を見ながら拡大していくのがおすすめです。
Phase 3:デジタル強化(優先度:中)
④SNS連携コンテンツの強化
所要時間:継続的(週2-3回投稿) 担当者:1名(兼任可)
- インスタ映えスポットの定期紹介
- お客様投稿の再共有・活用
- 独自ハッシュタグの作成と促進
リソース効率化のポイント: お客様の投稿を活用することで、新規コンテンツ作成の負担を軽減できます。
⑤データ分析環境の整備
所要時間:初期設定1週間、運用は月1回チェック 担当者:1名(外部委託も可)
- Google Analyticsの導入・活用
- 予約完了までの行動分析
- A/Bテストによる継続改善
段階的アプローチ: 最初は基本的な数値確認から始めて、慣れてきたら詳細分析に進むことで負担を分散できます。
人手不足を解決する3つのアプローチ
1. 優先順位の明確化
すべてを同時に行う必要はありません。上記のPhase 1から順番に取り組み、効果を確認しながら次のステップに進むことで、限られたリソースを最大限活用できます。
2. 外部パートナーとの連携
- 写真撮影:地元のフリーカメラマンとの提携
- 記事作成:旅行ライターとの協業
- システム構築:ウェブ制作会社との継続契約
3. 既存リソースの有効活用
- お客様の投稿を積極的に活用
- 過去の旅行データから傾向分析
- スタッフの知識をコンテンツ化
データドリブンアプローチの重要性
私が常にお伝えしているのは、「勘や経験だけでなく、客観的なデータに基づいた戦略的なアプローチ」の重要性です。
なぜデータが重要なのか
- 効果測定の明確化:施策の成果を数値で確認
- 改善ポイントの特定:問題箇所の客観的把握
- 投資対効果の最大化:限られた予算の効率的活用
始めやすいデータ活用
- Google Analyticsでの基本指標確認
- 予約フォームでの離脱率分析
- お客様アンケートでの満足度測定
まとめ:人の温かさをデジタルで伝える
観光業界の最大の強みは「人の温かさ」です。しかし、デジタル化が進む中で、この強みをオンラインでも伝える必要があります。
重要なのは:
- 技術やシステムだけでは差別化は困難
- 長年培った専門知識と人的サービスの価値をデジタル化
- OTAにはない独自の価値を提供
実現への第一歩: まずは自社のサイト監査から始めませんか?現状を正しく把握することが、成功への第一歩です。
【プレゼン資料ダウンロード】
今回の記事で紹介した内容は、実際のプレゼンテーションで使用したスライド資料に基づいています。より詳細な図表やデータをご覧になりたい方は、以下よりプレゼン資料をダウンロードしていただけます。
資料内容:
- 観光庁統計データに基づく需要推移グラフ
- 5つのコンテンツ戦略の詳細図解
- 実践アクションの具体的チェックリスト
- 効果測定のためのKPI設定表
このような方におすすめ:
- 旅行会社のウェブ担当者様
- 観光業界のマーケティング担当者様
- デジタル化を検討中の旅行事業者様
ご相談・お問い合わせ
戦略的ウェブ制作工房エル・タジェールでは、観光業界のデジタル化支援を専門に行っております。
御社のデジタル成長パートナーとして、現状分析から戦略立案、実装支援まで一貫してサポートいたします。
「施策をやりたいが人手が足りない」という課題も、適切な優先順位付けと段階的なアプローチで解決可能です。まずはお気軽にご相談ください。