先に結論
WordPress 7.1 が2026年8月19日にリリースされました。WordCamp US 2026(フェニックス)の最終日に合わせた公開です。目玉はレスポンシブスタイルとホバー・フォーカスの見た目設定で、これまで追加CSSを書かないとできなかったことが、エディターの中で完結するようになりました。
ただし、手放しで自動更新に任せてよいバージョンではありません。互換性の要注意点が2つあります。
- 投稿エディターが常にiframeになる——カスタムブロックやエディター拡張プラグインを入れているサイトは影響を受ける可能性があります
- 投稿一覧テーブルの行見出しが移動する——2010年から変わっていないマークアップが動きます。管理画面を拡張しているサイトは静かに壊れる型です
- 事前情報にあったリアルタイム共同編集は7.1に入っていません。React 19も見送り、クラシックブロックの非表示は撤回されました
- 7.1より先に、8月13日のセキュリティリリース7.0.4が当たっているかを確認してください。x
WordPress 7.1で実際に変わること
1. スマホ・タブレット用の見た目を、CSSなしで指定できる
7.1で最も影響が大きい機能です。これまで「パソコンでは余白を広く、スマホでは狭く」といった調整は、追加CSSを書くか、テーマの theme.json を直接触るしかありませんでした。7.1からは、エディターの表示切り替え(デスクトップ/タブレット/モバイル)ごとにスタイルを設定できます。グローバルスタイルでブロック種別ごとに指定することも、個別のブロックだけを指定することもできます。
theme.json では @mobile / @tablet というキーで入れ子にします。@desktop というキーは意図的に用意されていません。ブロックの標準スタイルがそのままデスクトップの値で、上書きしなかったプロパティはすべての画面幅にそのまま効き続ける、という考え方です。ブレークポイントもテーマ側で変更できるようになりました。既定値はモバイル480px・タブレット782pxです。
ひとつ注意点があります。この恩恵を自動で受けられるのは、標準のブロックサポート(タイポグラフィ・色・背景・枠線・寸法・余白・レイアウト)を使っているブロックだけです。独自のスタイルコントロールを持つカスタムブロックは対象外になります。自作ブロックやプラグイン製のブロックを使っているサイトは、ここが確認の分かれ目です。
2. ホバー・フォーカスの見た目をエディターから設定できる
マウスを乗せたとき(hover)、キーボードで選択したとき(focus)などの見た目を、theme.json とエディターから指定できるようになりました。ただし7.1の時点で対象はボタンブロックとナビゲーションリンクブロックのみです。「全ブロックでホバーが作れる」わけではないので、期待値はそこに合わせておいてください。
「ボタンにマウスを乗せても何も反応しない」——これは中小企業のサイトで本当によく見かける状態です。これまで追加CSSで対応していた領域が、標準機能に入ってきたことになります。
3. 投稿エディターが常にiframeになる(要注意点・その1)
7.0までは、投稿の中身に応じてiframeになったりならなかったりしていました。7.1では条件が撤廃され、常にiframeです。テーマの種類も、ブロックのAPIバージョンも、旧来のメタボックスの有無も関係ありません。
不具合が出るとしたら、原因はほぼ一つに集約されます。iframeは管理画面とは別のドキュメントとウィンドウを持つ、ということです。グローバルの document や window を直接触ってエディター内の要素を操作しているコードは、違うドキュメントを見に行くことになります。心当たりがあるのは、次のようなサイトです。
- 独自に開発したカスタムブロックを入れている
- エディターの見た目をJavaScriptで拡張するプラグインを使っている
- 古いページビルダー系プラグインが残っている
4. 投稿一覧テーブルの行見出しが移動する(要注意点・その2)
これは静かに壊れるタイプの変更です。投稿一覧テーブルの行見出し(th scope=”row”)が、チェックボックス列からタイトル列に移りました。チェックボックスのセルは td になり、タイトルのセルが th になって、投稿タイトルを読み上げるためのラベルを持ちます。

スクリーンリーダーが各行を「チェックボックス」ではなく投稿名で読み上げるようになる、まっとうな改善です。ただ、このマークアップは2010年からほとんど変わっていません。それを前提にしたプラグインは相当数あるはずです。
そしてこの種の変更は「エラーが出る」形では表れません。「なぜか一括操作が効かない」「行の表示が少し崩れている」——その程度の顔をして紛れ込みます。管理画面を拡張している顧客サイトを預かっているなら、投稿一覧を実際に開いて確かめる10分を先に取ってください。
5. その他、運用に効く変更
- タブブロックとプレイリストブロックが正式版に。実験的機能から昇格しました。料金プランの出し分けなどにタブを使いたかった場合、標準機能で組めます
- メディアライブラリの無限スクロールが既定で有効に(ユーザーごとに解除できます)
- SVGアイコンAPIが公開APIに。プラグインから独自のアイコンセットを登録できるようになりました
- 管理画面上部のツールバーが画面間で保持されるようになりました
- ナビゲーションブロックが子要素にフォントサイズを伝播しなくなりました。入れ子のドロップダウンで文字サイズが倍々に膨らむ既知の挙動が解消されます。逆に、テーマ側でナビ項目のフォントサイズ用クラスを直接狙っている場合は表示が変わる可能性があります
「入る」と言われていて入らなかったもの
事前情報を追っていた方ほど、ここを取り違えている可能性があります。次の4つは7.1には入っていません。
- リアルタイム共同編集——7.1では有効化されていません。ノート機能側で、メンションのメール通知とリビジョンの共有リンクが追加された段階です
- React 19——再度見送られ、7.1は18.3のままです
- クラシックブロックをブロック挿入ツールから隠す変更——撤回されました。これまでどおり表示されます
- 「On This Day」ダッシュボードウィジェット——未搭載です






リリース前の情報では「7.1で共同編集が入る」と書いていた記事がかなりありました。お客様に期待値として伝えてしまっていると、リリース後に「入っていないじゃないか」という話になります。
訂正は早いほど軽く済みます。心当たりがあれば、今日のうちに一言入れておくのが安全です。
自動更新は、そのままにしていいのか?
サイトによって答えが違います。判断はこの2択で足ります。
自動更新のままでよいサイト
- 公式ディレクトリのテーマと標準ブロックだけで組んである
- プラグインが10個以内で、いずれも更新が継続されている
- 管理画面をカスタマイズしていない
一度止めて、テスト環境で先に確認すべきサイト
- 独自開発のカスタムブロックが入っている
- 管理画面や投稿一覧を拡張するプラグインを使っている
- ページビルダー系プラグインで組んである
- 更新が1年以上止まっているプラグインが1つでもある






ここを取り違えると、いちばん危険な状態になります。「更新が怖いから全部止める」——気持ちは分かるのですが、8月だけでセキュリティリリースが3回出ていることを考えれば、止めることのリスクのほうがはるかに大きい。
止めるのはメジャーだけ、マイナーは自動のまま。ここは譲らないでください。
更新前に見る3か所
1. その前に、7.0.4が当たっているか
7.1の話の前提です。7月17日の7.0.2、8月6日の7.0.3、8月13日の7.0.4と、セキュリティリリースが続いています。7.0.2は深刻度が高く、WordPress.org側で強制更新が有効化されたほどでした。まずここが最新であることを確認してください。
2. バックアップが「戻せる状態」で取れているか






ここだけは何度でも言います。「バックアップを取っている」と「戻せる」は別の話です。復元手順を一度も試したことがないなら、それはバックアップではなく、バックアップのつもりです。
今日ひとつだけやるなら、テスト環境に一度戻してみる作業を選んでください。7.1のように編集画面まわりの構造が変わるバージョンでは、ここが最後の保険になります。
3. プラグインの対応バージョンが7.1になっているか
プラグインページの「WordPress の最新バージョンとの互換性」表示を確認します。7.1対応が明記されていないプラグインが多いサイトほど、数日待ってから上げるほうが安全です。
今回は様子見でいいのか?
結論から言えば、急いで上げる理由はないが、放置していい理由もないバージョンです。






7.1はセキュリティ修正が主目的のリリースではありません。その意味で、当日に飛びつく必然性は薄い。ただ、投稿エディターの常時iframe化のような構造的な変更は、放置しても消えません。次のメジャーでまとめて出てくるだけです。
先送りは、問題を消しているのではなく、束ねているだけ。バージョンを1つ飛ばすたびに、あとで切り分ける手間は確実に増えます。
現実的な進め方は、この3ステップです。
- リリース当日から数日は様子を見る(互換性の報告が出そろうのを待つ)
- その間にテスト環境で先に上げて、投稿画面と投稿一覧を実際に触ってみる
- 問題がなければ本番へ。問題が出たら、どのプラグインが原因かを切り分けてから
この3ステップを自社で回すか、任せるか。判断すべきなのは、そこだけです。
まとめ
WordPress 7.1(2026年8月19日リリース)の要点を整理します。
- 使える機能:レスポンシブスタイル、ホバー・フォーカスの設定、タブ/プレイリストブロックの正式版化
- 要注意:投稿エディターの常時iframe化、投稿一覧テーブルの行見出し移動。カスタムブロックや管理画面拡張があるサイトは、メジャーの自動更新を一度止める
- 誤解しやすい点:リアルタイム共同編集は7.1には入っていない
- 順番:7.1より先に、7.0.4が当たっているかを確認する
バージョンが上がるたびに何が変わったかを追いかけるのは、正直なところ手間です。ただ、この手間を惜しんだ結果として「ある日突然、投稿画面が真っ白になった」という相談は、毎年必ず届きます。更新は作業ではなく、判断です。判断の材料だけでも、手元に置いておいてください。
