一番見てほしいページは、メニューの中にあるか

先に結論

64社のサイトを1社ずつ見てきました。上部に並ぶメニュー(グローバルナビ)の状態まで実測が残っているのは15社で、そのうち9社は、メニューのせいで一番見せたいものにたどり着けない状態でした。9社のうち7社は、私の分類では「証拠が束ねられていない」型です。材料が無いのではなく、入口が用意されていませんでした。

そもそもサイトのメニューは、誰のためにあるのか?

メニューは、初めて来た人が持っている唯一の地図です。 サイトを作った側は全ページの場所を覚えていますが、来た人は覚えていません。

ここが厄介なところで、自分のサイトを自分で見るとき、私たちはメニューをほとんど見ていません。見なくても目的のページに行けるからです。だからメニューは、サイトの中でいちばん点検されない場所になります。

来た人の動き方は、これとは違います。トップページを見て「ここに頼めるかもしれない」と思った瞬間、上に並んでいる言葉を目で追い、「実績」「料金」「事例」のどれかを探します。探している言葉が無ければ、多くの人はサイト内を探し回らず、戻るボタンを押します。

私は診断のとき、この動きをそのまま再現します。トップページを開いて、上の項目だけを見て、「一番いい仕事が見たい」と思ったらどこを押すか。押した先に、期待したものがあったか。手順としてはこれだけで、特別な道具はいりません。

一番見てほしいページは、メニューの中にあるか?

メニューに項目が無いページは、公開されていても、外から来た人には存在していないのと同じ状態になります。

実測でいちばん驚いたのは、実績の記事を55本も公開している会社でした。実績の一覧ページもきちんと存在していて、開けば表示されます。ところが上のメニューは「トップページ/お知らせ/アクセス/お問い合わせ」の4項目だけで、実績への入口がありませんでした。

55本というのは、何年もかけて1本ずつ書き足してきた数です。1本あたりに割いた時間を考えると、これは相当な蓄積だと思います。それが、道が引かれていないというだけの理由で、来た人の目に触れていませんでした。

似た形は他にもありました。項目がパソコンの大きな画面でも三本線のボタン(ハンバーガーメニュー)の中に畳まれたままだった会社。地域ごとに分かれた3つのサイトを実際に毎日更新しているのに、その入口が小さなプルダウン1つで、開くまで地名が画面に出てこない会社。どれも、持っているものは十分でした。

メニューの言葉と、その先の中身は合っているか?

ラベルと中身がずれていると、期待して押した人ほど強く裏切られます。

メニューに「WORKS」と書いてある会社がありました。制作物を見たい人は迷わずここを押します。ところが、その行き先はサービス紹介のページでした。全部で644文字。記事のタイトルも、取引先の名前も、数字も、そこには1つも書かれていませんでした。

別の会社では「活用事例」という項目がありました。開くと、ポスター、チラシ、名刺、観光地、不動産といった用途のカテゴリが並んでいるだけで、実名の事例は0件です。ではその会社に事例が無かったのかというと、そうではありませんでした。お祭りの公式サイトに紹介ページが作られるような案件も、大きなイベントでの採用も、行政のピッチ選考の通過も、すべて「お知らせ」欄の中に日付順で流れて埋もれていました。

中身が逆転していたわけです。事例のページに事例が無く、お知らせのページに事例がある。この形は、移すだけで直ります。新しく作るものは何もありません。

ラベルのずれは、作った当時は正しかったのに、あとから中身だけが変わっていった結果であることも多いと感じています。責める話ではなく、時間が経てば起きることだと思います。

その言葉は、来た人が知っている言葉か?

メニューの項目名は、社内の呼び方ではなく、探している人が頭に浮かべる言葉で書く必要があります。

メニューの6項目がすべてラテン語で並んでいた会社がありました。「Negotium」が事業内容、「Interrogatio」がお問い合わせです。世界観としては一貫していて、私はきれいだと思いました。ただ、一番見てほしい事業内容のページへの扉に、読める札が下がっていない状態でもありました。

英語だけのメニューも複数ありました。日本語への切り替えリンクが用意されているのに、押しても切り替わらない会社もありました。「About/Service/Case study/Message/News」という並びは見慣れているので違和感がないのですが、これを目で追って一瞬で意味が像を結ぶかどうかは、読む人によって差が出ます。

言い添えておくと、英語のメニューが悪いという話ではありません。海外のお客様が主なら、それが正解です。判断の基準は、来てほしい人がその言葉を知っているかどうか、その一点だと思っています。

なぜ、これが「中身が足りない」と誤解されるのか?

問い合わせが来ないとき、原因は「載せていないこと」ではなく「たどり着けないこと」のほうが多いからです。

メニューが行き止まりになっていた9社を、私は課題の種類で分類し直してみました。7社が「証拠が束ねられていない」型でした。つまり、実績も事例も声も持っていて、ただ束ねられていないだけです。

この状態にいる方の手元には、たいてい「新しく作らなければ」という判断が浮かんでいます。実績が伝わっていないなら実績ページを作ろう、写真を撮り直そう、いっそサイトごと作り直そう、と。私は制作を仕事にしていますから、そう言われれば作れます。作れますが、55本の記事を持っている会社に必要なのは、56本目ではないはずです。

私は以前、納品したサイトの数字を自分から見に行っていませんでした。「きれいですね」と言われれば、それで仕事が終わったと思っていました。作ったものが機能しているかを確かめる習慣を取り戻すのに、ずいぶん遠回りをしています。だからいまは、足すより先に、すでにあるものが届いているかを見るようにしています。

メニューがうまくいっている会社は、何をしていたか?

行き止まりが無かった会社に共通していたのは、項目名が「お客さんの用事」になっていたことです。

印象に残っているのは、3つの事業を「買う、借りる、整える」という3語で並べていた会社です。会社の側の都合でいえば、販売部門・リース部門・整備部門という区切りになるところを、来た人が自分の用事をそのまま当てはめられる形に置き換えていました。

サイトを見に来る人は、その会社の組織図を知りません。知っているのは、自分が何をしたいかだけです。メニューがその言葉でできていれば、地図は成立します。難しい設計ではなく、並べ替えと言い換えで届く範囲の話だと思います。

まとめ:今日できる小さな一歩

今日は、サイトを開かずにできる確認から始めてみてください。声に出すか、紙に書くかしていただければ済みます。

① 御社の一番いい仕事を人に見てもらうには、トップページからどこを押してもらえばいいか、口で説明できますか?

② いま説明に使った言葉は、実際にメニューに並んでいる言葉と同じですか?

①で説明に手間取ったなら、それは道が長いということかもしれません。作った本人が迷う道は、初めて来た人にはもっと分かりにくいはずです。逆に、①がすらすら言えたのなら、御社は自分の強みを把握できています。あとはその道順を画面の上に置き直すだけ、という段階かもしれません。

②で言葉が食い違ったなら、そこが今日の一手です。頭の中では「実績を見てほしい」と思っているのに、画面には別の言葉が並んでいる。この差は、メニューの項目名を1つ書き換えるだけで埋まることがあります。制作会社に頼む場合も、「メニューに実績への項目を足してください」と伝えれば通じます。

御社が積み上げてきた仕事は、消えてはいません。ただ、そこへ続く道に札が下がっていないだけかもしれない、というのが、64社を一通り見た私の実感です。

サイトで無料相談受付中

https://shinichi-miyazaki.website/free-consultation/