2026年7月、国会議員の公式サイト28件を実測しました。CSSから16進カラーコードを機械的にカウントし、ヒーロー画像をダウンロードして支配色を抽出し、Last-Modifiedヘッダーでリニューアル時期を特定する。デザインの印象評価ではなく、数値の調査です。
はじめは配色を見るつもりでした。ところが、いちばん差がついていたのは色ではありませんでした。
28件のうち、ファーストビューのキャッチコピーをHTMLのテキストで組んでいたのは、わずか2件です。残る26件は、コピーが画像になっていました。
調査の範囲と方法
先に範囲をはっきりさせておきます。
今回の対象は、野党系の女性国会議員および元議員28人の公式サイトです。与党の議員、男性議員は含んでいません。ここに出てくる数字は、あくまでこの28件の範囲のものです。同じ手法を別の母集団に広げれば、結論は変わるかもしれません。
範囲を絞ったことで得たものもあります。母集団の条件が揃うことです。実測すると、28件中11件が主色をピンク/マゼンタ系にしていました。色の振れ幅が小さい集団なので、「色以外で何が差になるのか」を観察するには適した対象でした。
なお、この記事は各サイトの作りについての技術的な観察です。政治的な内容や主張についての評価は一切含みません。
調査手法は次のとおりです。
- 各サイトの生HTMLとCSSを直接取得
- 16進カラーコードを機械的にカウント
- ヒーロー画像をダウンロードして支配色を抽出
- Last-Modifiedヘッダーでリニューアル時期を特定
調査日:2026年7月30日/対象28サイト。
キャッチコピーを画像にすると、3つを同時に失う
1. 検索エンジンに読まれない
コピーを画像にすると、そこに書かれた言葉はテキストとして存在しなくなります。alt属性を入れれば代替テキストにはなりますが、今回の28件では、コピー画像のaltが空文字になっているサイトが複数ありました。alt属性そのものが無いサイトもありました。1件は、コピーがCSSの背景画像として置かれており、altを入れる場所すらありません。
サイトでいちばん大きく、いちばん目立つ一文が、検索エンジンからは存在しないことになっている。これはSEOの手前の問題です。
2. 改行が制御できない
35文字前後のキャッチコピーを画像にすると、PCとスマートフォンで改行位置を変えるために2ファイル必要になります。実際、PC用とSP用でコピー画像を2枚持っているサイトがありました。文言を一語直すたびに、2枚とも作り直すことになります。
テキストなら、CSSの1行で済みます。
3. 更新が止まる
デザインソフトを開き、書き出し、アップロードし、差し替える。この手間があると、コピーは「気軽に直せないもの」になります。今回、設計レベルで手が入っていたのは28件中3件だけで、残りは画像の差し替えにとどまっていました。
コピーをテキストで組んでいた2件は、梅村みずほ氏(ローディング画面とヒーローの2箇所に同じテキストとして出る)と、櫛渕万里氏(テキストにtext-shadowを重ねる)でした。
色では、差がついていなかった
主色の系統を分類すると、こうなりました。
- ピンク/マゼンタ系:11件
- 紺・青系:5件
- 赤・朱・えんじ系:4件
- オレンジ系:3件
- 緑:1件
- ティール:1件
- 独自のブランドカラーなし:2件
ピンク/マゼンタが11件で最多です。つまりこの分野では、ピンクを選ぶこと自体が差別化になりません。選んだ時点で11件の中に入ります。
もうひとつ、色について興味深い数字が出ました。CSSに定義されている色の数です。最も少ないサイトは26色、最も多いサイトは117色でした。
117色を意図して設計した人はいないはずです。継ぎ足しの結果です。同じ濃紺が3つの値で併存しているサイト、オレンジが6種類混在しているサイトもありました。
色は、選ぶものというより管理するものだ、というのが実測から出た結論です。
実際に差がついていた4つのこと
地の色を、白から「わずかに色の乗った白」へ
最も安く、最も効いていたのがこれです。
堤かなめ氏はクリーム(#FFF0DE/#FFF6F0)を地に使っています。梅村みずほ氏は淡く青みを寄せた白を4段階持ち、セクションごとに使い分けていました。大石あきこ氏は白に紙のテクスチャを重ねています。
純白は、硬く事務的に見えます。1〜3%だけ色を寄せた白にするだけで、画面の体温が上がります。実装コストはほぼゼロです。
明朝を、1箇所だけ効かせる
28件のうち、明朝/セリフ体を意図して使っているのは3件だけでした。残る25件はゴシック一辺倒です。
徳永エリ氏は、リード文とページタイトルを明朝(Noto Serif JP)、本文をゴシックにしています。和文組版のセオリー通りの使い分けです。ロゴかキャッチの1箇所だけを明朝にする。これが、最も安く差がつく打ち手でした。
ただし読み込むだけでは意味がありません。1件、Noto Serif JPを読み込みながら適用箇所が0件というサイトがありました。フォントのダウンロードだけが発生している状態です。
写真を、スタジオではなく街の中で撮る
最も参考になったのは大石あきこ氏のファーストビューです。商店街の路上に立つ、膝上のやや引き。標識・電柱・通行人が望遠のシャローフォーカスで大きくボケています。自然光、目線はカメラ。
スタジオで切り抜いた写真は、どれだけ写りが良くても「近さ」とは矛盾します。背景に生活が写っているのにボケているから雑然としない。「近い」を、被写体ではなく場所で語る手法です。
ヒーローの型そのものは「写真1枚+コピー1つ」が最も強く、スライダー3〜5枚が最多かつ最弱でした。言うことが3つあると、どれも残りません。
紙とペンで、署名を1点つくる
追加の撮影も実装も要らない打ち手として、手書き署名がありました。実測したファイルは500×98ピクセル、13キロバイト。本人が紙とペンで名前を書き、透過処理をして1点置くだけです。大河原まさこ氏と塩村あやか氏が持っていました。
今回見た「近さ」の打ち手のなかで、いちばん安いものです。
これは、議員サイトだけの話ではない
ここまで議員サイトの話をしてきましたが、当てはまるのは個人の顔が商品になる仕事全般です。
士業、講師、コンサルタント、クリニックの院長、地域の会社の社長。いずれもサイトの一等地に本人の写真と一文が置かれます。そしてその一文が画像になっている確率は、決して低くありません。
自分のサイトで確かめる3つのこと
いますぐできます。
- トップページで、キャッチコピーの部分をマウスでドラッグしてみる。選択できなければ画像です。
- 画像だった場合、右クリックから「検証」を開いてalt属性の中身を見る。空、または属性ごと無ければ、その一文は検索エンジンに存在していません。
- 背景が純白かどうかを見る。#FFFFFFなら、1〜3%だけ色を寄せる余地があります。
1と2で問題が見つかった場合、直し方は2通りです。コピーをHTMLテキストに置き換えるのが本筋。デザイン上どうしても画像を使いたい場合は、最低でもaltに同じ文言を入れてください。
この3つをご自分のサイトで確かめる時間が取れないときは、30分の無料診断で画面を共有しながらご一緒に見ます。
まとめ
28件を実測して分かったのは、差がついていたのは色ではなく、次の4点だったということです。
- キャッチコピーがテキストか、画像か(テキストは2件のみ)
- 地が純白か、わずかに色を寄せた白か
- 明朝を1箇所効かせているか(3件のみ)
- 写真をスタジオで撮ったか、街の中で撮ったか
いずれも高価な打ち手ではありません。むしろ、いちばん効いていた「地の色」と「コピーをテキストにする」は、追加費用がほぼかかりません。
配色を悩む前に、コピーが選択できるかどうかを確かめてみてください。
よくある質問
必ずとは言えません。書体やレイアウトを厳密に再現したい場面はあります。ただしその場合もalt属性に同じ文言を必ず入れてください。今回の28件では、画像化した26件のうち複数がaltを空にしており、サイトで最も目立つ一文が検索エンジンから見えない状態になっていました。
単色でベタ塗りにすると「手作り感」に寄ります。今回参考になった例は、実際に紙とペンで書いた文字をスキャンし、透過処理したものでした。書体で柔らかさを出そうとすると丸ゴシックに行きがちで、むしろそちらのほうが安っぽく見えます。
地の色は画面上の背景なので、印刷物のブランドカラーとは別に扱って問題ありません。変えるのは背景だけで、ロゴや主色には触らないためです。1〜3%の範囲であれば「白い」という印象は保たれます。
1箇所だけです。今回の3件はいずれもロゴ、ページタイトル、リード文のいずれかに限定し、本文はゴシックのままでした。本文まで明朝にすると読みにくくなります。読み込んだだけで適用していないサイトもあったので、実際に反映されているかまで確認してください。
4つのうち「地の色」と「altの追加」は、既存サイトのままでも対応できます。コピーのテキスト化はテーマの作りによります。エルタジェールでは、まず現状を実測して、どこまでが改修で届くのかをお伝えしています。
