先に結論
名刺交換をした会社のサイトを74社分診断し、それぞれの「最重要課題」を一行だけ書き残してきました。その74行を、主語で分けてみました。
いちばん多かったのは「その会社がすでに持っているもの」が主語の31社でした。ゼロから書き足す必要があったのは17社。残る26社は、機械への指定・公開前の入力の残り・古くなった数字でした。
つまり74社のうち57社は、新しく作る話ではありませんでした。ただし、持っている会社のほうが3秒で伝わっていたかというと、そうではありませんでした。
そもそも「最重要課題を一行で書く」とは、何をしているのか?
私は1社につき課題を1つだけ選び、一行で書きます。上限は決めていませんが、結果として40〜60字に収まります。
診断では3つの軸で見ています。伝わり度(最初の画面で何屋さんか3秒で伝わるか)、選ばれる理由(他と違う「らしさ」が言葉になっているか)、次の一歩(迷わず問い合わせられるか)の3つです。
そのうえで、いちばん効きそうな1つを選んで一行にします。たとえば「信頼の証(創業77年・グッドデザイン賞・メディア掲載)を選ばれる理由として一箇所に集約する」といった書き方です。
複数書かない理由は単純です。5つ渡されたら、たいてい0つ実行されるからです。1つに絞れば、明日の朝に手が動きます。
この一行は74社分たまりました。今回はその一行そのものを数え直しています。サイトを数えたのではなく、私が書いた文を数えました。
74社の一行を主語で分けると、いくつに分かれたか?
5つに分かれました。31社・18社・17社・4社・4社です。
| 一行の主語 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| その会社がすでに持っているもの | 31社 | 41.9% |
| 見出しやタイトルなど、機械への指定 | 18社 | 24.3% |
| 「無い」もの | 17社 | 23.0% |
| 公開前の入力がそのまま残ったもの | 4社 | 5.4% |
| 昔は正しかった数字 | 4社 | 5.4% |
分類は私が後からつけたものです。診断中に決めていた区分ではありません。台帳に一行ずつ書きためたあと、74行を並べて主語だけを見ました。
この5つのうち、ゼロから書き起こす必要があるのは3つ目の17社だけです。残り57社(77.0%)は、すでにサイトの中にあるものの置き場所を変えるか、指定を直すか、書き換えるかで済みます。
いちばん多かった31社は、何が主語だったか?
創業年数、受賞歴、取引先の社名、導入実績の数字、そして自分で書いたコピーです。すべてサイトの中にありました。
一行の実例をいくつか挙げます。社名は伏せます。
「6,618社・約21万ライセンスという導入実績が、タイトルタグの空いた旧ページに置き去りになっている」
「臨床導入800施設が、沿革ページの年表の1行にしか存在していない」
「38社の取引先が企業概要ページの一番下にだけ置かれ、トップページには1社も出ていない」
「一番いいコピーが、一番奥に置かれている」
どれも「持っていない」とは書いていません。持っていて、そこにある、と書いています。私が書いた一行の主語が、その会社の資産の名前になっているわけです。
この31社を課題カテゴリで見ると、28社が「証拠が束ねられていない」に入りました。証拠が無いのではなく、散らばっている状態です。
「無い」が主語だった17社は、何が違ったか?
書き足すものが要ります。ただし17社の内訳を見ると、大きな制作ではありませんでした。
「電話番号が、サイトの画面に1つも出ていない」
「『ご相談も承っています』と書かれているのに、サイトのどこにも連絡先がない」
「『WORKS』という名前のページに、works(実績)が一つも載っていない」
「トップページに、自社を示す数字が一つも出てこない」
連絡先を1行足す、実績を1件載せる、数字を1つ出す。工事の規模としては小さい部類です。ただし、31社と違って「どこにあるか探す」では終わりません。誰かが文章を書く必要があります。
17社のうち8社は「証拠が束ねられていない」、5社は「導線」、3社は「一言で言えていない」でした。
持っている会社のほうが、3秒で伝わっていたか?
伝わっていませんでした。伝わり度が△だった割合は、31社で51.6%、17社で52.9%。差は1.3ポイントしかありません。
ここが今回いちばん意外だった数字です。
「選ばれる理由」の軸では、はっきり差が出ました。△の割合は31社で25.8%、17社で47.1%。21.3ポイントの開きです。持っている会社は、自分の強みを言葉にはできています。
ところが伝わり度になると、その差が消えます。強みが言語化できていても、最初の画面で何屋さんか伝わるかどうかは、ほとんど変わりませんでした。
31社のうち、選ばれる理由が○以上なのに伝わり度が△だった会社は9社(29.0%)ありました。強みは書けている。ただ、それが最初の画面には出ていない、という状態です。
「次の一歩」では、31社の△が48.4%で、17社の35.3%より高く出ました。持っている会社のほうが、問い合わせへの案内では劣っていたことになります。
なぜ、持っているものほど奥に置かれるのか?
自分の実績を前に出す作業が、自慢に見えるからだと思います。
31社の一行を並べていて、置かれていた場所に共通点がありました。企業概要ページの一番下。沿革の年表の1行。求人情報の枠の中。お知らせの時系列リストの中。9割スクロールした先。
どれも「書いてはいる」場所です。書かなかったのではなく、目立たない場所を選んでいます。
腕のいい方ほど、この判断をされます。取引先の社名を最初の画面に並べるのは、なんとなく気が引ける。数字を大きく出すのは、押しつけがましい。だから会社概要の下のほうに、事実として控えめに置く。
これは怠慢ではなく、誠実さの裏返しだと思っています。ただ、初めて来た人は会社概要を開きません。開く前に、ここが自分の探している会社かどうかを決めます。
私自身、10年ほど前に同じことをしていました。作ったサイトを見て「きれいですね」と言われて満足し、半年後に「そういえば問い合わせ、あんまり変わらないんだよね」と言われました。あのとき私が渡したのは、事実が正しく載っているサイトでした。順番までは考えていませんでした。
この分け方は、私の主観で偏っていないか?
偏っている可能性があります。数字で確かめたので、そのまま書きます。
台帳には、その会社に発見レターを書いたかどうかの記録が残っています。発見レターは、私が「いいなぁ」と本気で思った会社にだけ送る手紙です。つまり私の主観が入った印です。
「持っているもの」の31社では、発見レターも書いた会社が17社(54.8%)。「無い」の17社では3社(17.6%)でした。
私が良いと思った会社ほど、「持っている」に分類されています。順序が逆かもしれません。持っているから良いと思ったのか、良いと思ったから持っていると書いたのか、この数字では切り分けられません。
言えるのは、31社と17社の比較には私の選び方が混ざっている、ということです。一方で「74社中57社は新しく作る話ではなかった」という数え方のほうは、群を比べていないので、この偏りの影響を受けません。
御社の一行は、どこから書き始めればいいか?
自分のサイトで、一行を書く順番は決まっています。まず探し、無ければ書く、です。
私が74社でやっている手順は3つです。
①最初の画面を見て、何屋さんかが分かるかを確かめる。分からなければ、その言葉がサイトのどこかにあるかを探す。会社概要、沿革、代表挨拶、求人ページ、この4か所によく入っています。
②見つかったら、それは「持っている」側です。課題は文章を書くことではなく、置く場所を決めることになります。
③どこを探しても無ければ、そこは書く場所です。ここで初めて、新しく書く作業が発生します。
74社では、③まで進んだのが17社でした。4社に3社は、②で止まっています。
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まとめ:今日できる小さな一歩
今日は直す作業ではなく、探す作業です。10分あれば終わります。
① 御社が「これは他所には無い」と思っているもの——創業年数、取引先、導入件数、資格、受賞歴——を1つ思い浮かべてください。それは、サイトのどのページの、どのあたりに書いてありますか?
② その1つを、まったく知らない人が最初の画面だけ見て受け取れますか?
①で場所がすぐに答えられたなら、御社は31社と同じ側にいる可能性があります。書く仕事はもう終わっているということです。残っているのは、どこに置くかを決めることだけかもしれません。場所が思い出せなかった場合も、無いとは限りません。会社概要か沿革の下のほうに入っていることが、74社ではよくありました。
②で「最初の画面には出ていない」となったなら、それは手を抜いた結果ではないと思います。自分の実績を一番目立つ場所に置くのは、多くの方にとって気が進まない作業です。ただ、31社のうち9社が、強みを言葉にできているのに最初の画面では伝わっていませんでした。同じ場所で止まっている会社は、思っているより多いということかもしれません。
私が74社の一行を書き終えて残ったのは、足りないものを数えた記録ではなく、すでにある物の置き場所を書き写した記録でした。御社の一行も、たぶん同じ形になります。
