2026年10月20日(日本時間では21日の未明)、WordPress 7.2のベータ1が公開されました。正式リリースは12月8日の予定です。
この記事では、公式発表の内容を整理したうえで、WordPressでサイト制作と運用のお手伝いをしている宮崎として、「これからWordPressのウェブ制作がどう変わっていくか」の見立てを書きます。
先にお断りしておくと、ここで書く見立ては仮説です。正式版が出たら、実際のサイトで数字を見ながら確かめていきます。
まず押さえたい注意:ベータ版は本番サイトに入れない
公式発表でも、ベータ版はテストと開発のためのもので、本番サイトや業務上重要なサイトには入れないよう明記されています。
試してみたい場合は、次のような方法があります。
- WordPress Playground:ブラウザ上ですぐに7.2ベータ1を触れます。インストール不要なので、いちばん手軽です
- WordPress Beta Testerプラグイン:テスト用のサイトに入れて、ベータ版に切り替えます
- WP-CLI:
wp core update --version=7.2-beta1で更新できます(開発者向け)
お客様のサイトについては、12月8日の正式版が出て、使っているテーマやプラグインが対応したことを確認してから更新するのが安全です。
なお、正式版を待つあいだに本番サイトでやっておけることとして、2026年10月に公開された7.1.3のセキュリティ修正(7件)の適用があります。内容と、更新前に確認しておく点はWordPress 7.1.3の記事にまとめています。
WordPress 7.2の主な新機能
公式発表から、事業者の方にも関係が深いものを中心に整理します。
デザイン:画面サイズごとの調整、テキストシャドウ、グローバルスタイル
- レスポンシブ設定の拡張:7.1で始まった「画面サイズごとに見た目を変える」設定が、より多くのデザインツールとブロックに広がりました。ギャラリーの列数・画像の切り抜き・縦横比も、画面サイズごとに設定できます
- テキストシャドウ(文字の影):ブロックの設定から文字に影を付けられるようになりました。テーマの設定ファイル(theme.json)にあらかじめ型として登録しておくこともできます
- グローバルスタイルの改善:サイト全体の基本スタイルから「変更が加えられたブロック」を絞り込める表示が加わり、フォーム部品のスタイル調整にも対応しました
編集体験:ナビゲーション、ノート、分かりやすいエラー表示
- ナビゲーション(メニュー)の管理:サイトエディターのサイドバーから、メニュー項目の追加・並べ替え・編集ができるようになりました
- ノート(共同編集のメモ):ノートが編集画面の余白に表示されるようになり、絵文字でのリアクション、最小化表示が加わりました。ノートとブロック設定を同時に開いておくこともできます
- エラーメッセージの改善:何かがうまくいかなかったときの表示が、より分かりやすくなりました
管理画面とメディア:高速化、ブラウザ側での画像処理、「On This Day」
- 管理画面の高速化:スクリプトやスタイルの読み込み方を見直し、次に開きそうな画面を先読みする仕組みが入りました
- ブラウザ側での画像処理:メディアライブラリにアップロードする前に、ブラウザ側で画像の縮小・圧縮・形式変換ができるようになりました。画像処理が得意でないサーバーでも負担が減ります
- 「On This Day」ウィジェット:ダッシュボードに、過去の同じ日付に公開した記事を表示するウィジェットが加わりました
開発者向け:Secrets API、Abilities API ほか
- Secrets API:外部サービスのAPIキーなど、秘密にすべき情報を安全に保存するための標準の仕組みです。保存時の暗号化や、キーの入れ替えにも対応しています
- Abilities APIの拡張:WordPressのデータにアクセスしたり検索したりする機能が広がりました。公式発表では「連携・自動化・AIを使ったツールの、一貫した土台」と位置づけられています
- Interactivity API・HTML APIの改善:動きのあるブロックを作るための仕組みが強化されました
宮崎の見立て:WordPressのウェブ制作は、こう変わっていく
ここからは、7.2の中身を踏まえた私の見方です。
1. 「見た目を整える」作業は、制作者の専売ではなくなっていく
これまで、スマートフォンとパソコンで見た目を変えたり、文字に影を付けたりするには、追加のCSS(見た目を指定するコード)を書くのが一般的でした。7.2では、その多くがブロックの設定でできるようになります。
これは事業者の方にとって良い変化です。ちょっとした見た目の調整を、自分で、すぐにできるようになるからです。
一方で、制作する側から見ると、「きれいに作れる」ことだけでは、選んでいただく理由になりにくくなっていくと考えています。価値の重心は、何を伝えるか(その事業者らしさを言葉にすること)と、伝わったかどうかを確かめることに移っていくはずです。
2. AIが「サイトを操作する側」に回る。だから「何をさせるか」を決める人が要る
今回いちばん注目しているのは、目立たない開発者向けの2つ、Abilities APIの拡張とSecrets APIです。
Abilities APIは、公式発表がはっきり「AIを使ったツールの土台」と書いています。Secrets APIは、外部サービスとつなぐためのキーを安全に扱う仕組みです。どちらも、WordPressの外にあるAIやツールが、WordPressの中のデータを読み書きするための下地と読めます。
ここから先、記事の下書きや定型的な更新作業の一部は、AIが担う場面が増えていくでしょう。ただ、AIは「何をすれば御社の成果になるか」までは決めてくれません。何をさせるかを決め、やった結果が本当に効いたのかを確かめる役割は、むしろ重くなると見ています。
3. 「納品」の線が薄くなり、制作は「伴走」に近づいていく
ノート機能の強化は、地味ですが制作の進め方に効いてきます。原稿や画面の修正のやり取りを、メールやチャットではなく、WordPressの編集画面の中で直接できるようになるからです。
1つ目の「事業者が自分で調整できる」変化と合わせて考えると、「作って、納品して、終わり」という区切りは、だんだん意味を持たなくなっていきます。公開した後も、事業者と制作者が同じ画面を見ながら一緒に育てていく形が、自然になっていくと思います。
私が月額の「かかりつけウェブ顧問」として、毎月お客様と一緒にアクセスの数字を見ているのも、この考え方からです。
4. 過去の記事は「掘り起こす資産」になる
「On This Day」ウィジェットは、過去の同じ日に書いた記事を思い出させてくれます。過去記事を見直すきっかけとして、良い仕組みです。
ただ、どの記事を書き直すべきかは、日付ではなくデータで決めたいところです。Googleサーチコンソールで、表示回数はあるのにクリックされていない記事や、順位が少しずつ下がっている記事を探す。ウィジェットは「思い出すきっかけ」、判断は「数字」。この組み合わせで使うのが良いと考えています。
5. 速くなったのは管理画面。お客様が見る画面の速さは、別に測る
管理画面の高速化や、ブラウザ側での画像処理は、運用する人の負担を確かに減らします。
ただし、今回の高速化の対象は主に管理画面です。サイトを訪れるお客様にとっての表示速度は、テーマ・プラグイン・画像の扱い方で大きく変わります。PageSpeed Insightsなどで、正式版に更新する前と後の数字を比べて確かめることをおすすめします。
なぜ、ここまで「確かめる」ことにこだわるのか
以前、お客様からこう言われたことがあります。
「そういえば問い合わせ、あんまり変わらないんだよね」
責める言葉ではありませんでした。世間話のついでのような、軽い一言でした。だからこそ、こたえました。
私はもともとセールスライティングの仕事をしていて、「書いたものを測る」という規律を持っていました。ところが、ホームページ制作の現場では、その規律を置いてきてしまっていた。知らなかったのではなく、持っていたものを手放していたのです。
だから今は、測ります。
WordPressは、版を重ねるごとに「きれいに作る」ことが簡単になっていきます。7.2もその流れの中にあります。だからこそ、作ったものが本当に届いているかを確かめることの価値は、これから大きくなっていく。私はそう考えています。
あの一言を、もう言わせたくありません。
正式版(12月8日)までに、事業者の方にしておいていただきたいこと
- 今のサイトの状態を確認する:WordPressのバージョン、PHPのバージョン、使っているテーマとプラグインの一覧
- バックアップの体制を確認する:更新前に、すぐ元に戻せる状態かどうか
- 更新のタイミングを決めておく:正式版が出てすぐ更新するのか、プラグインの対応を待つのか、担当の方と話しておく
- 興味があれば触ってみる:WordPress Playgroundなら、自分のサイトに影響を与えずに新機能を試せます
まとめ
- WordPress 7.2のベータ1が公開され、正式版は2026年12月8日の予定
- ベータ版は本番サイトに入れず、Playgroundやテスト環境で試す
- デザイン設定の拡張で、「見た目を整える」作業は事業者自身でもできる範囲が広がる
- Abilities APIとSecrets APIは、AIやツールがWordPressを操作するための土台
- 制作の価値は「作る」から、「何を伝えるか」と「伝わったかを確かめる」へ移っていく
WordPress 7.2への更新が心配な方、更新後に数字がどう動いたかを一緒に確かめたい方は、30分の無料診断をご利用ください(平日8時〜16時・オンライン可)。
参考:WordPress 7.2 Beta 1 is ready for download and testing!(WordPress.org News)
ブランドマネージャー・ウェブ解析士の宮崎真一
よくある質問
公式のスケジュールでは、2026年12月8日の予定です。それまでにベータ版とRC版(リリース候補版)が順に公開され、不具合の修正が進みます。予定は変わることもあるため、更新の計画は公式発表を確認しながら立てるのが安全です。
おすすめしません。公式発表でも、本番サイトや業務上重要なサイトには入れないよう明記されています。試す場合は、ブラウザ上で動くWordPress Playgroundや、本番とは別のテスト環境を使ってください。
公式発表に「崩れる」という記載はありませんが、テーマやプラグインの組み合わせによっては表示が変わる可能性があります。正式版が出たら、まずテスト環境やバックアップを取ったうえで更新し、主要なページを確認するのが確実です。
7.2で拡張されたAbilities APIは、主に開発者向けの土台です。事業者の方が管理画面からすぐ使う機能というより、今後これに対応したプラグインやツールが出てくることで、便利さを実感できるようになると考えています。
サイトの規模や、使っているテーマ・プラグインの数によって変わります。まずは30分の無料診断で今のサイトの状態を伺い、必要な作業と費用の内訳をお示ししたうえでご判断いただく形にしています。
