先に結論(この記事の要点)
- 値上げの前にそろえるのは、新しい言葉ではなく、すでに持っている記録です。やってきた仕事、続けてきた年数、言ってもらった言葉の3つです。
- 私が診断した124社で、いちばん多かった課題は「材料はあるのに1か所にまとまっていない」で52社でした。124社の4割を超えます。
- 記録を持っていない会社より、持っていて散らばらせている会社のほうが多い、ということです。
値上げしても離れない方と、離れる方は何が違うのか?
価格のほかに比べるものを持っているかどうかです。ほかに材料がないとき、人は金額だけで比べます。
値上げを決めたときにいちばん不安なのは、「高くなったから、よそへ行かれる」ことだと思います。ただ、よそへ行く方が金額だけを見ているわけではありません。金額のほかに比べるものが見つからなかったとき、金額で比べます。
比べるものというのは、御社がこれまでにやってきたことの記録です。どんな仕事をしたか、どれくらい続けているか、受け取った方が何と言ったか。これが相手の手元にあるかどうかで、同じ金額の見え方が変わります。
ですので、値上げの準備は金額を書き換えることから始まりません。記録をそろえることから始まります。
その記録は、新しく作らないといけないのか?
ほとんどの場合、すでに持っています。124社で足りていなかったのは記録そのものではなく、置き方でした。
私は診断のとき、いちばん直すとよいと考えた点を1社につき1つだけ選んで記録しています。124社ぶんを数えると、こうなりました。
| いちばん直すとよいと考えた点 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 材料はあるのに1か所にまとまっていない | 52社 | 41.9% |
| 問い合わせまでの進み方 | 48社 | 38.7% |
| その他 | 17社 | 13.7% |
| 一言で言えていない | 7社 | 5.6% |
いちばん多いのが「材料はあるのに1か所にまとまっていない」です。いちばん少ないのが「一言で言えていない」で、7社でした。
そしてこの52社のうち38社では、ほかとの違いもすでに文章になっていました。記録を持っていない会社ではなく、持っていて散らばらせている会社が最多だった、ということです。
散らばっているとは、どういう状態か?
1つのページに集まっていない状態です。実績はブログ、年数は会社概要、お客様の声はSNSに分かれていることが多いです。
よくあるのは、次の形です。
- やってきた仕事:お知らせやブログ記事の中に、1件ずつ書いてある
- 続けてきた年数:会社概要の「設立」の行に、数字だけある
- 言ってもらった言葉:SNSや地図アプリの口コミにあり、サイトには載っていない
どれも嘘ではありませんし、手を抜いた結果でもありません。ただ、読む方が3か所を回って集めてくれることは、まずありません。見積もりを比べている最中であればなおさらです。
なぜ、散らばったままになるのか?
記録が1件ずつ増えるからです。増えた日に書く場所が、そのときいちばん手の届く場所になります。
やってきた仕事も、言ってもらった言葉も、ある日まとめて10件届くものではありません。1件ずつ、間を置いて増えます。
増えた日にいちばん早く書けるのが、ブログだったりSNSだったりします。そこに書くこと自体は正しい行動です。ただ、それを1か所に集め直す日は、どこにも入っていません。集め直しても新しく増えるものがないので、後回しになります。
これは私の見立てで、台帳で確かめたのは割合だけです。
御社では、どうそろえればよいか?
紙を1枚使うだけです。サイトはまだ触りません。
1つ目。紙に3つの見出しを書いてください。「やってきた仕事」「続けてきた年数」「言ってもらった言葉」。
2つ目。サイトとSNSを見ながら、それぞれに3つずつ書き出してください。新しく考えるものは1つもありません。すでにどこかにあるものを写すだけです。
3つ目。書き出した9つを置くページを1つ決めてください。すでにある実績ページやお客様の声のページでかまいません。無ければ、会社概要の下に足します。
ここまでで、値上げの準備は終わりです。金額を書き換えるのは、そのあとで間に合います。
▶ こうした診断の数字を、毎週メールでお送りしています(無料)
https://shinichi-miyazaki.website/newsletter/?cta=week0930m
そろえた3つは、どの順番で並べればよいのか?
読む方が迷っている順に並べます。やってきた仕事、言ってもらった言葉、続けてきた年数の順です。
値上げのあとに見積もりを見た方が最初に思うのは、「この金額で、何をしてもらえるのか」です。ですので、やってきた仕事がいちばん上に来ます。件数ではなく、1件の中身が分かる形にしてください。どんな依頼で、どう進めて、どうなったか。3行で足ります。
次が、言ってもらった言葉です。同じことを御社が書くより、受け取った方の言葉で書いてあるほうが、読む方は信じます。1件でかまいません。
年数はいちばん下で足ります。年数は安心の材料にはなりますが、金額の説明にはなりません。18年続けていることと、この金額であることは、読む方の中ではすぐにつながらないからです。上の2つを読んだあとで年数を見ると、はじめて「それだけやってきた結果か」と読めます。
この並べ方は、私が診断で見ている順番と同じです。124社のうち、この3つが1か所にそろっていた会社は多くありませんでしたが、そろっていた会社では、どれも仕事の中身が先に来ていました。
先に価格を上げてしまった場合は、どうすればよいか?
順番が入れ替わっただけです。いまからそろえても間に合います。
値上げの告知を先に出してしまっていても、取り返しがつかないことではありません。見積もりを出すのも、問い合わせに答えるのも、これからだからです。
気をつけるのは1点だけだと思っています。値上げの理由を「物価が上がったため」とだけ書かないことです。その一文は、同業のどの会社でも書けます。先ほどの3つをそろえたうえで、これまでにやってきたことと並べて示すほうが、読む方には伝わります。
よくある質問
社名や写真を出すなら必要です。ただ、どんな依頼を受けて、どう進めて、何が変わったかは、社名を伏せても書けます。私が124社の診断結果を記事にしているこの連載も、同じやり方です。
次にお会いしたときに、1つだけ聞いてみてください。「決める前に、いちばん迷ったことは何でしたか」。その答えは、次に迷っている方にそのまま効きます。褒め言葉をもらうより、迷いを聞くほうが頼みやすいと思います。
決まった年数はありません。3年でも、その3年で何件やったかを添えれば材料になります。年数だけを大きく出すより、年数と件数を並べるほうが読む方には分かりやすくなります。
はい。無料でお送りしています。最初の画面で何屋か伝わるか、ほかとの違いが文章になっているか、問い合わせまで進めるかの3点を見て、いちばん直すとよいと考えた点を1つ書いてお返しします。3か月後にもう一度見に行って、その結果もお伝えします。私は作って納めるところまでではなく、御社のウェブのかかりつけとして続けて診るほうを仕事にしています。
まとめ:今日できる小さな一歩
今日は紙を1枚だけ使います。サイトは触りません。
① これまでにやってきた仕事を、3つ挙げられますか。
② お客様から言われた言葉を、1つ思い出せますか。
③ その3つと1つは、いま御社のサイトの何ページに分かれていますか。
①で3つ挙がった場合、値上げの材料はもう手元にあります。あとは書き出す作業です。
②で思い出せた場合、その言葉は今日のうちに紙に書いておいてください。載せる許可を取るのは、あとで間に合います。
③で2ページ以上に分かれていた場合、御社は私が見た124社のうち52社と同じ形です。いちばん多い形なので、珍しいことではありません。集め直す先のページを1つ決めるところから始められます。
御社の仕事の値打ちは、金額を上げる前からそこにあります。足りないのは根拠ではなく、根拠が1か所にそろっていないことかもしれません。
