先に結論(この記事の要点)
- 名刺交換した会社のサイトを簡易診断し、累計63社の台帳になりました。今週は「伝えることを売っている会社」21社と、それ以外の42社に分けて比べました。
- 「3秒で何屋か伝わらない」割合は、伝えるプロ21社が66.7%、それ以外42社が45.2%。プロの側が21.4ポイント高いという逆の結果でした。
- ところが「次の一歩(問い合わせ導線)」だけは逆転します。△は伝えるプロ28.6%、それ以外47.6%。技能は落ちていません。
- 落ちているのは技能ではなく、自分について書くことでした。私自身が同じ場所でつまずいた人間なので、これは他人事として書けません。
63社をどう2つに分けたのか?
台帳の「業種」欄の文字だけで機械的に2群に分けました。判断や印象は入れていません。
分け方はこうです。業種欄に「Web/ウェブ/デザイン/ブランディング/広告/メディア/映像/写真/制作」のいずれかの語が含まれる会社を「伝えるプロ群」21社、含まれない会社を「それ以外群」42社としました。ウェブ制作、グラフィックデザイン、広告・PR、映像制作、写真、Webメディア運営などが前者に入ります。
機械的にしたのには理由があります。「この会社は伝えるプロっぽい」と私が主観で選ぶと、結論に合う会社だけを拾ってしまうからです。文字列で分ければ、読んだ方が同じ手順で追試できます。
3軸の評価基準も毎回同じです。伝わり度は「ファーストビューで、何屋で・誰の・何を解決するかが3秒で伝わるか」。選ばれる理由は「競合と違う”らしさ”が言語化されているか」。次の一歩は「訪問者が迷わず行動できるCTA設計か」。◎○△の3段階で記録しています。
累計63社(前週から+8社)が、21社と42社、ちょうど1対2に分かれました。
伝えるプロのサイトのほうが、伝わっていないのか?
伝わり度△は、伝えるプロ群66.7%(14/21)に対し、それ以外群45.2%(19/42)。差は21.4ポイントで、プロの側が悪い結果でした。
「選ばれる理由」も同じ向きでした。△は伝えるプロ群42.9%(9/21)、それ以外群28.6%(12/42)。差は14.3ポイントです。63社全体では伝わり度△52.4%(33/63)、選ばれる理由△33.3%(21/63)、次の一歩△41.3%(26/63)なので、伝えるプロ群は上2つの軸で全体平均より悪い側に振れています。
念のため書いておくと、これは「その会社の仕事が下手だ」という話ではありません。私が見ているのは、あくまでその会社自身のサイトの、最初の3秒だけです。クライアントに納品した仕事は1件も見ていません。
それは「腕が悪い」ということなのか?
いいえ。3軸のうち「次の一歩」だけは、伝えるプロ群のほうが明確に良好でした。ここが今週いちばん大事な数字です。
次の一歩△は、伝えるプロ群28.6%(6/21)、それ以外群47.6%(20/42)。19.0ポイント、プロの側が良い。3軸のうちここだけ向きが逆になりました。
3軸すべてが△の会社も、伝えるプロ群は2社(9.5%)、それ以外群は7社(16.7%)で、プロの側が少ない。つまり、こういうことです。
- 問い合わせ導線を設計する技能は、ちゃんと使えている
- 自分が何屋かを最初の3秒で名乗ることだけが、抜けている
技能の話なら、両方できないはずです。片方だけできて、片方だけ抜ける。これは腕の問題ではなく、向ける先の問題だと私は読みました。
この差は、私が診断先を選んだせいではないのか?
先に自分を疑いました。結論から書くと、レーンの構成では説明がつきませんでした。
私の台帳には「レーン」という列があります。診断だけをした会社と、それに加えて「発見レター」——見返りを求めず、その会社の”らしさ”を私の言葉で書いて送る手紙——も書いた会社を分けてあります。発見レターを書いたのは、私が心から「いいなぁ」と思った会社です。
先週の記事で、この2群には大きな差が出ることを書きました。だから今週も、「伝えるプロ群にたまたま発見レターを書いていない会社が偏っていれば、それだけで差が出てしまう」と疑う必要がありました。
数えました。発見レターまで書いた会社の比率は、伝えるプロ群が42.9%(9/21)、それ以外群が47.6%(20/42)。ほぼ同じです。 偏りでは説明できません。
もうひとつ、正直に書いておきます。私の台帳は名刺交換した相手が母数なので、ウェブ・デザイン系が3分の1を占めています。一般の中小企業の分布ではありません。この記事の21社は「日本の制作会社の姿」ではなく、「宮崎が名刺を交換した範囲の姿」です。 サンプル数も21社と42社で違うので、断定はしません。今後、母数が増えたときに割合が動くかどうかを見続けます。
なぜ、自分のことだけが書けないのか?
自分のサイトには、判断の基準になる「相手」がいないからだと思います。
人のサイトを設計するときは、こう考えます。この会社は何屋か。誰の、どんな困りごとを解決するのか。だから最初の3秒に何を置くべきか。相手のことなら、外から見て決められます。
自分のサイトになると、この足場が消えます。自分が何屋かは自分にとって自明で、当たり前すぎて書く価値を感じない。しかも「うちはこれが得意です」と大きく書くのは、どこか気恥ずかしい。だから代わりに実績や作品を並べる。それは嘘ではないけれど、初めて来た人が3秒で「何屋か」を掴む助けにはなりません。
腕のいい人ほど起きる現象だと考えています。技術に自信があるほど「見れば分かるはずだ」と思う。売り込むことに後ろめたさがある人ほど、自分について書くのを後回しにする。腕と、知られやすさが、皮肉にも反比例する。
これは私自身の話でもあります。私は制作者として、納品の日に「きれいですね」と言われることを評価だと思っていた時期がありました。数字を見に行っていなかった。あるお客様から「そういえば問い合わせ、あんまり変わらないんだよね」と、責める調子でもなく言われるまで、気づかなかったのです。知らなかったのではありません。「書いたものを測る」規律は、セールスライターとしてすでに持っていました。それを制作の現場に持ち込まずに置いてきただけです。
だから今週の21社の数字を、私は「作り手の怠慢」とは読みません。誠実さの副作用として読みます。目の前の相手の仕事に集中している人ほど、自分の看板は後回しになる。仕事の姿勢としては、むしろ真っ当です。
腕はいいのに伝わらない、と感じている人にとって、この数字は何を意味するのか?
「伝えるのが本業の会社でも、自分のことは伝えられていない」——つまり、これはあなたの能力の問題ではない、ということです。
「うちのサイト、何屋か3秒で分かるだろうか」と不安になった方へ。63社の台帳が示しているのは、伝えることを商売にしている21社の3分の2が、同じ場所でつまずいているという事実です。
原因は「自分でホームページを作らなかったから」でも「ウェブに詳しくないから」でもありません。詳しい人も同じところで止まっています。むしろ、詳しい人のほうが止まっていました。
これは慰めではなく、原因の切り分けとして書いています。原因が「知識不足」なら勉強するしかありません。でも原因が「自分については外から見られない」なら、答えは別です。誰かに外から見てもらえばいい。 勉強するより、ずっと早く終わります。
あなたが今確かめられること
トップページを開いて、最初の画面だけを人に見せて、3秒で閉じてもらってください。それだけで測れます。
- トップページをスマホで開く。 パソコンではなくスマホです。多くの場合、訪問者の半分以上がスマホから来ます。
- 業種を知らない知人や家族に見せる。 スクロールはさせず、最初の1画面だけ。3秒経ったら画面を伏せます。
- 「今の、何の会社だった?」と聞く。 答えが返ってこなければ、伝わり度は△です。
- 答えが返ってきたら「なんでこの会社に頼むんだと思う?」と聞く。 ここで詰まったら、選ばれる理由が△です。
△だったとしても、「強みがない」という意味ではありません。私の台帳では、選ばれる理由が○以上の42社のうち18社が、伝わり度は△でした。強みは持っているのに、置き場所が違うだけの会社が、それだけあるということです。
あなたの仕事は本物です。伝わる”形”になっていないだけ、という可能性は十分にあります。
よくある質問
業種欄の文字列だけで機械的に分けたので、同じ手順を踏めば誰でも同じ2群を再現できます。ただし「業種欄に何と書くか」は私が診断時に記入しているため、そこには私の解釈が入ります。サンプル数も21社対42社で偏りがあるため、傾向の報告であって証明ではないと考えています。
十分とは言えません。この記事は「63社を実際に見たらこうだった」という記録であり、日本の企業全体を推定するものではありません。毎週この台帳に社数を足しているので、割合が動くかどうかを今後も公開します。母数が増えても変わらないなら再現性があるということですし、変わるならその方が正しい情報です。
判定は私が行うので、主観がゼロではありません。ただ基準は毎回同じで、「ファーストビューで、何屋で・誰の・何を解決するかが3秒で伝わるか」の一点です。迷った場合は業種を知らない人に見せて確かめています。この記事の最後に書いた手順は、私が実際にやっていることをそのまま書いたものです。
自分では難しい、というのがこの記事の結論です。自分にとって自明なことほど、書かれているかどうかが見えなくなります。だから記事の手順では、必ず「業種を知らない人」に見てもらう形にしました。身近にいなければ、私の30分無料相談でも同じことをしています。画面を一緒に見ながら、最初の3秒に何が置かれているかを確認するだけの時間です。
起きうると思います。この記事の21社は、まさに制作側にいる会社です。ただし今回見たのは各社の自社サイトであって、クライアントへの納品物ではありません。自分の看板が後回しになることと、仕事の質は別の話です。判断材料にするなら、「その会社が自分のサイトで何をしているか」より「あなたのサイトについて数字で説明してくれるか」を見るほうが確実だと考えています。
