先に結論(この記事の要点)
- 名刺交換をした会社のサイトを78社診断しました。前週から7社増えています
- 診断した順に前半39社・後半39社で割ると、3つの軸すべてで後半のほうが良い数字でした(最大で35.9ポイント差)
- サイトが良くなったのではありません。私が診る相手の構成が、途中で入れ替わっていました
- この連載は8本にわたって「割合がほぼ変わらないこと」を再現性の根拠にしてきました。その根拠そのものが、いま崩れています
そもそも私は、何をどう数えているのか?
名刺交換をした会社のサイトを1社ずつ開き、3つの軸で◎○△をつけ、台帳に1行ずつ書きためています。今日で78社ぶんです。
3つの軸はこうです。
- 伝わり度:最初の画面で「何屋さんで・誰の・何を解決するか」が3秒で伝わるか
- 選ばれる理由:他と違う「らしさ」が言葉になっているか
- 次の一歩:迷わず問い合わせられる設計になっているか
判定基準は私の診断手順に書いてあるので、同じ基準で誰でも数え直せます。この連載の値打ちは、私の意見ではなく追試できることにあると思っています。
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78社の内訳はこうなりました。
| 軸 | ◎ | ○ | △ |
|---|---|---|---|
| 伝わり度 | 8社 | 31社 | 39社 |
| 選ばれる理由 | 4社 | 50社 | 24社 |
| 次の一歩 | 1社 | 49社 | 28社 |
ここまでは、これまでの回と同じ形です。今回は、この78社を診断した順番で割ってみました。
78社を前半と後半で割ると、何が起きていたか?
3つの軸すべてで、後半のほうが良い数字でした。
前半39社は2026年6月19日から8月5日まで、後半39社は8月5日から9月2日までです。ちょうど半分に割れました。
| 軸(△の割合) | 前半39社 | 後半39社 | 差 |
|---|---|---|---|
| 伝わり度 | 64.1%(25社) | 35.9%(14社) | −28.2pt |
| 選ばれる理由 | 48.7%(19社) | 12.8%(5社) | −35.9pt |
| 次の一歩 | 41.0%(16社) | 30.8%(12社) | −10.2pt |
3軸そろって下がっています。とくに「選ばれる理由」は、△が半数近くから8社に1社まで減りました。
累計での推移でも同じことが見えます。伝わり度△の割合は、41社の時点までは6割台で安定していました(60.0%→63.0%→62.5%→62.2%→63.4%)。それが55社で54.5%、63社で52.4%、71社で47.9%、そして今回78社で50.0%です。
41社を境に、明らかに下がっています。
数字が良くなったのは、サイトが良くなったからか?
違います。私が診る相手の構成が、途中でほぼ逆転していました。
台帳には「レーン」という列があります。診断だけをした会社か、それとも私が「いいなぁ」と思って、売り込みも改善提案も入れない賛辞の手紙を書いた会社かを分けた列です。後者を「両方」と書いています。
その構成比を、前半と後半で比べました。
| 診断だけ | 両方(手紙も書いた) | 両方の比率 | |
|---|---|---|---|
| 前半39社 | 32社 | 7社 | 17.9% |
| 後半39社 | 7社 | 32社 | 82.1% |
きれいに入れ替わっています。
そして「両方」の会社は、もともと数字が良い集団です。78社全体で見ると、伝わり度△は診断だけの39社が61.5%、両方の39社が38.5%。選ばれる理由△にいたっては51.3%と10.3%で、5倍の開きがあります。
当たり前といえば当たり前です。私が「いいなぁ」と思えたということは、その会社の「らしさ」が、私に読み取れる形で書いてあったということですから。
つまり後半で数字が良くなったのは、世の中のサイトが良くなったからではありません。私が、もともと良いほうの集団ばかり診るようになっていたからです。
私の評価が甘くなっただけではないのか?
この可能性は自分で疑いました。結論から言うと、それだけでは説明がつきません。
数をこなすうちに基準が緩む、という説明はありえます。だとすれば、レーンで層を分けても時期の差が残るはずです。分けてみました。
診断だけの会社に限って比べると、伝わり度△は前半32社で62.5%、後半7社で57.1%でした。差は5.4ポイントです。全体で見えていた28.2ポイントの差は、ほとんど消えました。
同じ条件の相手だけを並べると差が消える。これは「基準が緩んだ」より「相手が変わった」で説明するほうが素直です。
業種の構成が変わったせいではないのか?
これも確かめました。業種では説明できません。
前回の回で、私は「伝えることを売っている会社」(Web・デザイン・広告・映像・制作など)とそれ以外で群分けをしました。同じ分け方で構成比を見ます。
前半39社では13社(33.3%)、後半39社では10社(25.6%)。7.7ポイントの違いです。伝わり度で28.2ポイントの差が出た説明としては、小さすぎます。
それでも、否定しきれない可能性は何か?
「両方」の会社だけを取り出すと、その中でも時期の差が残っています。ここは私には判定できません。
正直に書きます。手紙も書いた会社に限って前半と後半を比べると、伝わり度△は71.4%から31.2%に下がっています。ただし前半の該当は7社しかありません。7社のうち5社が△なら71.4%、4社なら57.1%。1社動くだけで14ポイント揺れる母数です。
ここから「後半のほうが本当に良い」と言うことはできません。この部分は、母数が増えるまで保留します。
もうひとつ申し添えます。今回の累積推移は、いまの台帳を並べ直して計算したものです。過去の回で書いた値と1ポイントほどずれる箇所があります。台帳への追記順と診断日順が完全には一致していないためで、過去の記事の数字と突き合わせる方は、この差を見込んでください。
この偏りは、誰が母集団から消えたことを意味するのか?
「まだ言葉になっていない会社」です。
私はこの連載で、ずっと同じことを書いてきました。技術も誠実さも本物なのに、それが伝わる形になっていない。そういう方がいます、と。
ところが後半の39社のうち32社は、私が「いいなぁ」と思えた会社でした。思えたということは、すでに言葉になっていたということです。
私は自分の集計を良くしながら、いちばん書きたかった相手を、母集団から取りこぼしていました。
これは責める話ではなく、構造の話だと思っています。伝わっていない会社ほど、こちらの目に留まりません。留まらないから手紙も書かない。書かないから台帳では「診断だけ」に残る。そして私は、目に留まった側ばかりを診るようになる。
腕と知名度が反比例するという話を、私は測る側でも同じ形で繰り返していました。
だから直すのは、相手ではなく私の集め方です。次の20社は、意識して「診断だけ」のレーンから積みます。数字は悪くなるはずです。悪くなったほうが、この連載は正しく測れています。
御社が自分の数字を見るとき、何を先に確認すればよいか?
「増えた・減った」の前に、母数の中身が入れ替わっていないかを見てください。
これは私だけの話ではありません。たとえば、こういうときに同じことが起きます。
- 直帰率が良くなった → 広告を止めて、指名検索の人だけが残っただけかもしれない
- 問い合わせの質が上がった → 紹介の比率が増えただけかもしれない
- レビューの平均点が上がった → 常連さんにだけ声をかけたのかもしれない
どれも「悪い」わけではありません。ただ、打ち手が効いたのか、集まる人が変わったのかは、別の話です。
確かめ方は今回と同じで、2つだけです。
- 期間で半分に割って、両方の数字を出す
- 入口や経路で層を分けて、同じ層どうしで比べる
層を分けた瞬間に差が消えたら、それは打ち手ではなく母集団が動いています。Googleアナリティクスなら参照元、予約なら紹介か新規か、それだけ足せば見えます。
自分の数字が良くなったとき、素直に喜ぶ前に一度これをやる。私が今回やったのは、それだけです。
よくある質問
いいえ。名刺交換をした会社のサイトを、私が順に診断しています。無作為ではありません。今回の記事は、まさにその偏りが途中で変化していたことを扱っています。母集団の性質を明示しないまま「N社中M社が」と書くのは不誠実なので、以後も条件を書き添えます。
はい。3軸の判定基準は診断手順に明記しています。伝わり度は「3秒で何屋か伝わるか」、選ばれる理由は「らしさが言語化されているか」、次の一歩は「迷わず行動できるCTA設計か」です。同じ基準で誰でも数え直せます。
分かりにくいです。作った本人は文脈を全部知っているので、3秒で読み取れているかどうかを判定できません。社外の方に最初の画面だけを3秒見せて「何をしている会社に見えましたか」と聞くのがいちばん早い確認方法です。30分の無料相談でも、その場で一緒に確認しています。
測りたい対象が母集団から抜けていた、という意味です。私が測りたいのは「伝わっていない状態がどれくらいあるか」なので、伝わっている会社ばかり診れば数字は良くなりますが、知りたいことは分からなくなります。目的に対して母集団が正しいか、という話です。
月ごとに区切る方法もあります。今回は月別でも同じ傾向が出ていました(7月は伝わり度△が63.3%、8月は35.1%)。ただし月ごとだと件数が不揃いになるので、件数を揃えられる「順番で半分」のほうが比べやすいと考えて採用しました。
まとめ:今日できる小さな一歩
今日は、サイトを直す作業ではありません。御社がすでに持っている数字を、もう一度だけ違う割り方で見ていただく一歩です。5分あれば終わります。
① 直近で「良くなった」と感じた数字を1つ思い浮かべてください。それは、いつからいつまでを、いつからいつまでと比べた数字ですか?
② その2つの期間で、見に来た人の入口(検索・SNS・紹介・広告)の割合は、同じでしたか?
③ 同じ数字を、いちばん多い入口ひとつに絞って出し直したら、まだ同じ向きに動いていますか?
①で期間がすぐに答えられたなら、比べる土台はもうあります。ただ、期間の長さが違うと件数が揃わないことがあります。私が78社を「順番で半分」に割ったのは、月で区切ると件数が不揃いになったからでした。
②で割合が変わっていた場合、数字が動いた理由はサイトの中身ではなく、来ている人の構成のほうかもしれません。私の78社で起きていたのはこれでした。発見レターも書いた会社の比率が、前半17.9%から後半82.1%へ入れ替わっていました。
③で向きが変わったり、差がぐっと小さくなったりしたなら、最初に見えていた差の一部は構成の差だった可能性があります。私の場合、全体で28.2ポイントあった差が、層を揃えると5.4ポイントまで縮みました。差が残るようであれば、それは中身が動いた証拠として読んでよいと思います。
数字が良くなったとき、いちばん見えにくくなるのは、そこから外れていった人たちです。私は78社を数えながら、いちばん書きたかった相手を自分の集計から落としていました。御社の数字にも、同じ理由でまだ写っていない人がいるかもしれません。
