WEBデザイナーは本当に「要らなくなる」のか?ゴルフに例えて考えるAI時代の付き合い方

宮崎真一|ブランドマネージャー・ウェブ解析士

AIがグリーンまでボールを運び、人が最後の一打でホールに沈めるゴルフのイラスト。AI時代のWEBデザイナーの役割分担を表現し、「宮崎真一」のロゴサインが入ったアイキャッチ画像

デザインがコンセプトに合わない、を何度も経験してきた

以前から、コンセプトに合っていないと感じるデザインが上がってくるデザイナーさんとの付き合いに、正直なところ悩んできました。ヒアリングで方向性をすり合わせたつもりでも、いざ画面になると「なぜこの色を」「なぜこのレイアウトを」という違和感が拭えない。修正の往復が増え、納期が延び、結局自分で手を入れることも少なくありませんでした。

最近、WEBデザイナーの役割そのものが大きく変わりつつあることを実感する出来事がありました。そのきっかけになったのが、Qiitaに投稿された「すでにWEBデザイナーの8割は不要である」という記事です。タイトルは刺激的ですが、中身は数字と実務の観察に基づいた、かなり筋の通った内容でした。

「すでにWEBデザイナーの8割は不要である」という指摘

この記事の要旨は、ひとことで言うと「見た目をきれいに整えるだけのデザイナーは、AIとコンポーネントライブラリに置き換わりつつある。一方で、結果に責任を持てるデザイナーと、根拠を持ってデザインの意図を語れるデザイナーの2種類は、むしろ必要とされ続ける」というものです。

数字に表れている変化

記事では、生成AIの普及以降、ライティングやデザイン関連のフリーランス案件が目に見えて減少したという複数の調査結果が紹介されています。海外の研究機関の調査では画像生成系の仕事の需要が二桁パーセント落ち込んだとされ、国内の求人データでもUX系の求人数が大きく減少したという報告があります。一方で、単価が上がったと回答するフリーランスデザイナーも一定数いるとのことで、「安い案件が消え、高い案件は上がる」という二極化が進んでいる様子がうかがえます。

業務システムのデザインは「予測可能性」の勝負

とくに納得感が強かったのが、業務システムのUIについての指摘です。業務システムに求められるのは独自性ではなく、一覧・検索・詳細・編集フォームといった定番の構成を、迷いなく予測どおりに配置することです。ここにデザイナーの「もっと良い体験を」という提案が入ると、整合性チェックや実装の往復が増え、かえって工数が膨らんでしまう。標準的なデザインシステムの型を崩さずに組み上げる作業であれば、AIの方が得意だというのは、自分がシステム系の案件に関わってきた実感とも重なります。

それでも残るとされる2種類のデザイナー

一方で記事は、すべてのデザイナーが不要になるとは述べていません。toC向けのプロダクトで、登録率や継続率といった数字に対して「なぜこの設計にしたのか」を検証しながら語れる人。そしてコーポレートサイトやLPで、「誰に何を伝え、どう動いてほしいか」という根拠を持ってデザインを説明できる人。この2種類は、AIが標準的に出す「正しい画面」とは別の価値を提供できる、という整理です。

ゴルフに例えると、今の役割分担がよく分かる

この話を自分なりに咀嚼すると、ゴルフに例えるのがいちばんしっくりきます。

要件をMarkdownなどでしっかり言語化できていれば、AIはグリーンに乗せるところまで、かなり正確に球を運んでくれます。ページ構成、情報設計、標準的なUIパーツの組み合わせ――ここまでは、プロンプトと要件定義さえ丁寧に作り込めば、AIが自力でかなりのところまで寄せてきます。

ただし、グリーンに乗ったボールを、どういうラインで、どのくらいの力加減でカップに沈めるかは、まだ人の仕事です。「このターゲットにはこの余白を」「このファーストビューにはこの情報を」という、根拠を持った最後の詰めの部分。ここで必要とされるのは、画面を「きれいに作れる」スキルではなく、「なぜこの形にしたのか」を説明し、検証できる判断力です。

つまり、今デザイナーに求められているのは、ティーショットからグリーンまでを運ぶ仕事ではなく、グリーンに乗ってからホールに沈めるまでの、精度の高い最後の一打だけなのだと思います。

制作パートナーを選ぶときに、見ておきたいポイント

ここから先は、中小企業の経営者としてWEB制作のパートナーを選ぶ立場で考えると、どうなるでしょうか。ポイントは3つあると考えています。

1つ目は、要件を言語化する力があるか。AIにグリーンまで運んでもらうには、そもそも「どこに向かって打つか」を明確にする必要があります。ヒアリングの段階で、御社の事業や顧客像をどこまで深く掘り下げてくれるかが、その後の制作スピードと精度を大きく左右します。

2つ目は、デザインの根拠を言葉で説明できるか。「なんとなく良い感じ」で納品する人は、これからの時代、AIの「良い感じ」に価格で負けます。「このボタンをこの位置にした理由」「この余白を広くとった理由」を、数字や検証に基づいて説明できるかどうかを、見積もりの段階で聞いてみるとよいと思います。

3つ目は、作って終わりにしないか。グリーンに乗せるところまでがAIで速くなった分、ホールに沈める最後の精度と、そのあとの継続的な改善にこそ、人の時間を使うべきだと考えています。

まとめ

「WEBデザイナーはもう要らない」という見出しは刺激的ですが、実態はもう少し穏やかで、「誰でもできる部分はAIに置き換わり、根拠を持って判断できる部分の価値はむしろ上がる」という変化だと感じています。

エルタジェールでも、要件定義とヒアリングに時間をかけ、AIで素早くグリーンまで運んだうえで、最後の一打――ブランドの「らしさ」をどう画面に落とし込むか――に人の時間を使う、という制作スタイルに少しずつシフトしています。これからWEB制作のパートナーを探す方は、「グリーンまでの速さ」ではなく、「ホールに沈める精度」を基準に選んでみてください。

参考記事:「すでにWEBデザイナーの8割は不要である」(Qiita, kotowazaman氏)
https://qiita.com/kotowazaman/items/74621592ace2ff968670

よくある質問

WEBデザイナーは本当にもう必要なくなるのですか?

すべてのデザイナーが不要になるわけではありません。見た目を整えるだけの作業はAIに置き換わりやすい一方、結果に責任を持てる人や、デザインの根拠を説明できる人は今後も必要とされると考えています。

AIだけでホームページ制作を完結できますか?

要件が明確であればAIはかなりの部分まで形にしてくれますが、ターゲットに合わせた最後の調整や、ブランドの「らしさ」を言語化する部分は、現時点では人の判断が必要だと感じています。

要件を「md」で定義するとは、具体的にどういうことですか?

ページ構成や目的、ターゲット、必須要素などをMarkdown形式で整理し、AIが解釈しやすい形で要件を言語化することです。この精度が、AIが作る成果物の質を大きく左右します。

中小企業がWEB制作会社・デザイナーを選ぶとき、何を基準にすればいいですか?

要件を言語化する力、デザインの根拠を説明できるか、作って終わりにせず継続的に伴走してくれるかの3点を、見積もり段階で確認することをおすすめします。

エルタジェールに依頼する場合、費用感はどのくらいですか?

案件の規模や要件定義の深さによって変わるため一概には言えませんが、まずは無料のヒアリングで目的と予算感をすり合わせることが可能です。お気軽にお問い合わせください。

宮崎真一

宮崎真一

ブランドマネージャー・ウェブ解析士

東京都葛飾区で、WordPress制作とウェブ解析を行っています。保有資格は、ブランドマネージャー1級、ウェブ解析士、SEO検定1級、色彩検定3級、生成AIパスポートです。デジタル庁デジタル推進委員、つくば市ワンストップ窓口相談員を務めています。