先に結論
60社のサイトを1社ずつ診てきました。最初の画面で「何屋か」が迷わず伝わった会社は、6社でした。ではその6社は完璧だったかというと、6社とも直すところが1つずつありました。しかもそれは中身の話ではなく、置き場所と設定の話でした。伝え方が上手い会社ほど、つまずきは言葉から離れていきます。
そもそも私は、最初の何を見て「伝わった」と判断しているのか?
サイトを開いて最初に見える画面だけで、何をしている会社かが分かるかどうか。それだけを見ています。
私は診断のとき、まずスクロールせずに止まります。パソコンでもスマホでも、最初に目に入る一画面。そこに書かれている一番大きな文字を読んで、「この会社は何をしてくれる人なのか」が言えるかどうかを見ます。言えたら○、言い切れなければ△です。
この基準にしているのは、訪問者が最初の数秒で離れるか残るかを決めているからです。実際にアクセス解析を見ると、開いてすぐ離れていった人の数は、どのサイトでも決して小さくありません。長く読んでもらう工夫より前に、その数秒の一画面が仕事をしているかどうかが効いてきます。
60社の内訳は、迷わず伝わった会社が6社、伝わったが少し読ませる会社が23社、最初の一画面では分からなかった会社が31社でした。業種は60社で58種類、ほとんど重なっていません。
60社のうち、最初の一言で伝わったのは何社か?
6社です。全体の1割にあたります。
この6社は、最初の一画面で言い切っていました。たとえば「作れる人に、直接相談するのが、一番速い」と掲げ、その下に「営業も業務委託も挟みません」と続けていた会社。読んだ瞬間に、何を売っているかではなく、何が違うかまで分かります。
別の1社は、支援機関でありながら「私たちは、この地域のものづくりを元気にします」と最初の画面で名乗っていました。役所的な言い回しに逃げず、誰のために何をするかを一文にしていた。60社の中で、いちばん明快でした。
共通しているのは、飾りの言葉が少ないことです。長い理念でも、きれいな比喩でもない。自分の仕事を、そのまま短く言っているだけでした。
その6社には、直すところが無かったのか?
6社とも、直すところが1つありました。6社中6社です。
私は1社につき最重要課題を1つだけ選びます。全部書けば書けるのですが、直せない量を渡しても意味がないからです。その1つを、伝え方がいちばん上手い6社にも見つけました。並べるとこうなります。
①日本語のページのタイトルが、「ホーム」の二文字だけになっていた ── 別の言語のページでは、ちゃんと何屋かを名乗っていました。同じ会社の同じトップページなのに、言語によって外向きの顔が違っていた。
②一番大きいはずの見出しが、1ページの中に複数あった ── どれが主題か、機械の側から見ると決められない状態です。
③検索エンジンに「この住所が正しい」と伝える設定が、公開前の仮の置き場所を指したままだった ── サイトそのものは完成していて、設定だけが引っ越し前でした。
④最初の画面に出ている社名が、1文字違っていた。
⑤いちばん言いたい理念が、スクロールして10画面目に置かれていた ── 中身は良い言葉でした。置き場所だけが遠かった。
どれも、書き直しの話ではありません。すでにあるものの、置き場所と設定の話です。
伝わっている会社ほど、どこでつまずくのか?
言葉の課題から離れ、置き場所と設定の課題へ移ります。
60社の最重要課題を3つに分けると、こうなりました。証拠や実績が一箇所に束ねられていない(置き場所)が36社、たどり着けない・設定が抜けている(導線)が18社、そもそも一言で言えていない(言葉)が5社です。
ここからが本題です。最初の一言が言えていた29社を抜き出すと、「一言で言えていない」という課題の会社は0社でした。当たり前に聞こえますが、大事なのはその先です。29社の課題は、置き場所18社と設定11社の2つだけに分かれました。
さらに、いちばん伝わっていた6社に絞ると、置き場所3社・設定3社で半々になります。全体では設定の課題は3割ですから、上位の6社では倍近い比率です。伝え方が上手くなるほど、残るつまずきは言葉から設定側へ寄っていく。60社という小さな母数ではありますが、傾向としては、はっきり出ました。
なぜ、上手い会社ほどそこに気づけないのか?
設定は、見ている人には見えないところに書かれているからです。
上に挙げた5つを思い出してください。ページのタイトル、見出しの重なり、正しい住所を伝える設定。どれも、自分のサイトを普通に開いて眺めている限り、目に入りません。検索結果の一覧や、SNSに貼ったときの見え方や、機械が読んだときの姿にだけ出てきます。
言葉なら、読めば分かります。長すぎる、固い、何を言っているか分からない ── 自分で読んで違和感が持てる。ところが設定は、違和感の持ちようがない。だから「うちのサイトは大丈夫」という感覚が、いちばん当てになりません。
もう一つ理由があります。設定は多くの場合、制作した人が最後に整えるものです。公開して数年たてば、当時の担当者はもういません。中身を更新する人は、設定までは触らない。良いサイトほど長く使われるので、この抜けが残り続けます。
御社の場合、どこから確かめればいいか?
まず、自分のサイトの名前で検索してみてください。
順番に3つだけ。
①検索結果に出てくる青い見出しの文字を読む。そこに「何屋か」が入っていなければ、①の会社と同じ状態です。会社名だけ、あるいは「ホーム」となっていることが本当にあります。
②トップページのアドレスを、LINEでもSlackでも自分宛てに送ってみる。出てきたカードの画像と文字が、今のサイトと合っているかを見る。ここが古いままなら、SNSで紹介された時にその古い顔が出ます。
③スマホでトップページを開き、一番言いたい一文が何画面目にあるか数える。3画面より下なら、置き場所を上げる余地があります。
この3つは、専門の道具がなくてもできます。私が診断で最初にやっていることと、ほとんど同じです。
まとめ:今日できる小さな一歩
60社を診て分かったのは、伝え方が上手い会社が最後に落としているのは中身ではない、ということでした。良い言葉はすでに書かれていて、それが検索結果やSNSに出てくる「外向きの顔」まで届いていない。それだけの距離です。
今日やるなら、自分の会社名で検索して、出てきた青い文字を声に出して読んでみてください。それを聞いた人が「ああ、あれをやっている会社ね」と言えるかどうか。言えなければ、直すのは文章ではなく、その一行です。
御社の仕事は本物です。あとは、その良さが外に出るときの顔を、中身に追いつかせるだけかもしれません。