「検索はないと想定せよ」――Condé Nast CEOの発言と中小企業の検索依存リスク

ネイビー背景に「検索はないと想定せよ」の白文字見出しと、右側に右肩下がりの検索流入を示す折れ線グラフ、その先が複数の接点に枝分かれするイラスト。下部に宮崎真一・ブランドマネージャー/ウェブ解析士の署名。

大手メディアConde Nastのロジャー・リンチCEOが、社内に「検索はないものとして計画を立てよ」と伝えていたことが、海外メディアの取材で明らかになりました。検索エンジン経由の流入が、予算の想定を毎年超えて減り続けてきたためだといいます。この話は、海外の大手出版社だけの出来事ではありません。検索結果の変化は、地域で事業を営む中小企業のホームページにも同じように及んでいます。何が起きているのか、そして何を今から備えておくべきかを、データをもとに整理します。

Conde Nast CEOが社内に伝えた「検索はないと想定せよ」

Conde Nast(ヴォーグ、ニューヨーカーなどを傘下に持つ米大手出版社)のロジャー・リンチCEOは、OpenAIが買収した技術系トーク番組のインタビューで、社内チームに「検索はないものとして事業計画を立てるように」と伝えたと明らかにしました。過去3年、予算策定の際に検索経由の流入減少を見込んでいたものの、実際の減少幅はその想定を毎年上回り続けていたためだといいます。

ただし、検索流入が完全にゼロになると見ているわけではありません。全体の流入に占める割合が、1桁台まで落ち着くという見立てです。リンチ氏は、7〜8年前の検索結果画面と現在を比べ、AIによる要約、商品リンクの並び、広告が大幅に増え、従来型の検索結果(いわゆる「青いリンク」)は2ページ目まで行かないと見つからないほどになったと指摘しています。

同社のポートフォリオの中でも、強いブランドはより強く、どっちつかずの中間層が最も打撃を受ける「バーベル型」の二極化が進んでいるといいます。ヴォーグは毎年成長を続け、ニューヨーカーは過去最高の年を記録。一方でデジタル購読の収益は昨年29%増加し、今年も二桁成長が続いているとのことです。価格を引き上げても継続率が毎年改善しているという点は、「誰に、なぜ選ばれているか」が明確なブランドほど、検索の変化に左右されにくいことを示しています。

大手だけの話ではない——検索流入の縮小は中小企業にも及んでいる

この変化は、資本力のある大手メディアだけの問題ではありません。アナリティクス企業Chartbeatが今年3月に発表したデータでは、小規模パブリッシャーの検索経由の流入が、過去2年間で60%減少したと報告されています。また、ロイター・ジャーナリズム研究所の調査では、メディア責任者の多くが今後3年で検索流入が40%以上減少すると予想しています。

地域で事業を営む整体院や士業事務所、工務店などのホームページも、同じ検索結果画面の変化の中にあります。AI Overviews(AIによる検索結果の要約)が検索結果の上部を占める機会が増えれば、これまで上位表示されていたページへのクリックそのものが減ります。「SEOで検索順位を上げれば、お問い合わせが増える」という前提そのものが、少しずつ揺らいできているということです。

検索に頼らない集客を、どう作るか

まず、今どれだけ検索に依存しているかを数字で確認する

備えの第一歩は、危機感を煽ることではなく、現状を数字で確認することです。GA4の「集客」レポートで、検索(Organic Search)・直接(Direct)・紹介(Referral)・SNSなど、チャネルごとの流入比率と、そこからのお問い合わせ・予約につながった割合を見てみてください。検索の比率が極端に高い場合、検索結果の変化がそのまま売上に直結するリスクを抱えていることになります。

検索以外から「指名で」来てもらう導線を増やす

Conde Nastの事例で成長していたのは、デジタル購読という「検索を介さず、直接選ばれる」関係です。中小企業にとっての同じ関係づくりは、メールマガジンやSNSでの継続的な発信、紹介・口コミ、そして会社名や屋号での指名検索を増やす発信にあたります。検索順位に左右されない、自分たちで握れる接点を増やしておくことが、備えになります。

作って終わりにせず、継続して数字を見ていく

検索結果画面は、今後も変わり続けます。一度対策して終わりではなく、月に一度GA4やサーチコンソールの数字を見て、流入元の変化に早めに気づける状態を保つことが、検索依存から抜け出す一番の近道です。

まとめ——「検索だけに頼らない」状態を今から作る

Conde Nast CEOの発言は、検索流入が明日ゼロになるという極端な話ではありません。ただ、検索結果画面が変わり続けている以上、「検索流入が増える」ことを前提にした計画は、見直す時期に来ています。まずは自社の検索依存度を数字で確認し、検索以外からも選ばれる関係を、少しずつ育てていくこと。それが、今からできる備えです。

よくある質問

検索流入がゼロになるというのは本当ですか?

Conde Nast CEOの発言は「主要な流入源としては見込まない」という社内方針であり、実際にゼロになるという意味ではありません。ただし一部の媒体では、数年で検索経由の流入が60%近く減ったというデータもあり、備えは必要です。

中小企業にも関係がある話ですか?

はい。AI検索やAI Overviewsの普及で、検索結果の上位がAIの要約や広告に占められる動きは、中小企業のホームページにも及んでいます。検索だけに頼った集客計画は、見直す時期に来ています。

SEO対策はもう意味がないのでしょうか?

意味がなくなるわけではありません。ただし「検索流入が増える」ことを前提にした計画より、「検索以外からも問い合わせが来る状態」を同時に作る考え方が必要になっています。

検索に頼らない集客とは、具体的に何をすればいいですか?

メールマガジンやSNSでの直接の関係づくり、指名検索(社名・屋号での検索)を増やす発信、GA4で流入元ごとの数字を継続的に確認することが土台になります。

自社の検索依存度を調べてもらうことはできますか?

はい。GA4やサーチコンソールのデータをもとに、検索流入の推移と依存度を確認する無料のウェブ健康診断をご案内しています。まずは現状の数字を一緒に確認するところから始められます。