先に結論
一般社団法人ブランド・マネージャー認定協会のブランド・マネージャー1級を取得しました。
ただ、この記事でお伝えしたいのは「資格が増えました」という報告ではありません。この試験の採点基準そのものが、私が仕事で大事にしていることを、そのまま言葉にしていた——そのことをお伝えしたいと思っています。
1級の試験は、事業の収益性を評価しません。実現可能性も評価しません。評価するのは、決められた手順をすべて正しく踏めているか、その一点だけです。
「儲かる案かどうかは見ない。手順を踏めているかだけを見る」。この採点基準に、ブランドづくりという仕事の本質が現れていると感じています。
ブランド・マネージャー1級は、何を問う資格か?
まず、2級との違いから説明させてください。
2級は、ブランドをつくるための知識を問う資格です。ブランドとは何か、ブランド要素とは何か、ブランド・アイデンティティをどう定義するか。テキストに書かれた定義を正確に理解しているかが問われます。
1級は、その知識を使って実際に一つのブランドを設計しきれるかを問います。
課題は大きく2つでした。
1つめが、ブランド・ステートメントの作成です。ブランド・ステートメントというのは、ある事業のブランドを設計するために、市場環境の分析からターゲットの設定、ブランド・アイデンティティの言語化、そしてブランド要素の設計と目標設定までを、一連の流れとして書き切ったワークブックです。これを2種類つくります。1種類は最初から最後まで全ページ、もう1種類は前半のブランド・アイデンティティ定義まで。
私は1種類目を宿泊業のブランド設計で、2種類目を実在の飲食チェーンが新しい業態に進出するという想定でつくりました。
2つめが、筆記試験3問です。テキストの参照は認められていますが、逆に言えば「なんとなく合っている」では通りません。定義の誤りや、前後の記述の矛盾が減点対象になります。
なぜ「収益性は評価対象外」なのか?
私がいちばん驚いたのが、合格基準の中にあったこの一文でした。
収益性・事業の実現可能性は評価対象外
ブランドの試験なのに、その事業が儲かるかどうかを見ない。最初は不思議に思いました。
けれど、課題をつくり進めるうちに、これは非常に筋の通った基準だと分かってきました。
事業が儲かるかどうかは、市場の状況、タイミング、資本力、運の要素まで含めて決まります。そこを採点してしまうと、「うまくいきそうな案を思いつく才能」を測ることになってしまう。それは、教えることも、学ぶことも、再現することもできないものです。
一方で、「顧客を定義し、競合との違いを言葉にし、それをブランド要素に落とし込む」という手順は、教えられるし、学べるし、何度でも再現できます。
協会が採点しているのは、この再現可能な部分だけです。
つまりこの試験は、「ブランドづくりはセンスではなく技術である」という立場を、採点基準そのもので表明しているわけです。
この考え方は、私の仕事のやり方とどうつながるのか?
私はもともと、勘と経験でウェブサイトをつくって、成果が出なかった時期があります。デザインは褒められるのに、問い合わせが増えない。何が良くて何が悪かったのかも説明できない。そこからウェブ解析士の資格を取り、データを見て判断する仕事の仕方に切り替えました。
ブランドについても、同じことが起きていると感じています。
「ブランディング」という言葉は、いまだにロゴやデザインの話として語られがちです。あるいは「センスのある人が、なんとなくいい感じにするもの」だと思われています。
でも実際には、ブランドづくりには手順があります。
- 自社を取り巻く環境を3C・PEST・SWOTで整理する
- そこから、誰に選ばれたいのかを絞り込む
- その人にとっての「選ぶ理由」を一文で定義する(ブランド・アイデンティティ)
- 定義した一文を、名前・ロゴ・色・言葉・写真といったブランド要素に一貫して落とす
- 落としたあと、どうなったら成功なのかを数字で決めておく
この手順を飛ばして、いきなりロゴやサイトのデザインから始めると、「きれいだけど、なぜ自分たちがそう見せているのか説明できないサイト」が出来上がります。私が過去につくってしまったものが、まさにそれでした。
1級の課題は、この手順を1つも飛ばさずに踏み切る訓練でした。25ページのワークブックを、途中を省略せずに埋めていく作業です。正直に言うと、しんどい作業でした。飛ばしたくなる箇所が何度もありました。
そして、飛ばしたくなる箇所ほど、後の工程で効いてきました。
お客様にとっては、何が変わるのか?
資格そのものが、お客様に何かを提供するわけではありません。変わるのは、私が提供できる説明です。
これまで「御社の強みはここだと思います」とお伝えするとき、その根拠は私の見立てでした。経験に裏打ちされてはいても、なぜそう言えるのかを手順として示すことはできていませんでした。
これからは、そこに至るまでの過程をお見せできます。どの分析から何が分かって、なぜ他の選択肢ではなくこれを選んだのか。お客様が納得できないなら、どの工程に戻ればいいのかも分かります。
そして、この手順はお客様の側にも残ります。私がいなくなっても、社内で同じ手順をたどれば、新商品でも、採用でも、同じ考え方で判断できる。「宮崎に聞かないと分からない」状態をつくらないことが、私の考える一気通貫の意味です。
まとめ
ブランド・マネージャー1級を取得しました。
この試験が教えてくれたのは、ブランドづくりは、儲かる案を思いつく才能の話ではなく、手順を正しく踏む技術の話だということでした。
腕は確かなのに、それが伝わっていない。同業他社と何が違うのかを、自分の言葉で説明できない。そういうご相談をよくいただきます。
それはセンスの問題ではありません。手順を踏んでいないだけです。そして手順は、一緒に踏むことができます。
