旅館の英語サイト制作は、翻訳から始めない ── 見つけてもらい、迷わせず、直接予約までつなぐ順番

宮崎真一|ブランドマネージャー・ウェブ解析士

ネイビーの背景に「英語サイトは、翻訳から始めない」の文字と、「あ→A」の図。下に宮崎真一(ブランドマネージャー・ウェブ解析士)の署名

先に結論

旅館の英語サイトを作るとき、いちばん最後にやるのが翻訳です。先に決めることが3つあります。

  1. 海外のお客様に、どこで見つけてもらうか
  2. 予約の前に、何を知りたがっているか
  3. どの画面で、直接予約に進んでもらうか

この3つが決まっていないまま日本語ページを英語に置き換えても、ページは増えますが、予約は増えにくい。順番を変えるだけで、同じ予算の使い道が変わります。

なぜ「日本語ページを訳すだけ」ではうまくいかないのか?

日本語のページは、日本人のお客様が読む前提で書かれています。季節の料理、建物の歴史、女将のごあいさつ。どれも宿の「らしさ」が詰まった、大切な情報です。

一方で、海外のお客様が予約の前に確かめたいのは、たとえば次のようなことです。

  • 表示されている料金に、税・サービス料・入湯税が含まれているか
  • 1人あたりの料金か、1室あたりの料金か
  • 夕食と朝食が含まれているか、時間は決まっているか
  • 食物アレルギーや、ベジタリアン・ハラルなど食事の制限に対応できるか
  • 大浴場の入り方、タトゥーの扱い
  • キャンセルの条件と、いつまでなら無料か
  • 駅からの行き方、送迎の有無

伝えたいことと、知りたいことがずれている。ここが、旅館の英語サイトでつまずきやすいところです。日本語ページをそのまま訳すと、このずれもそのまま英語になります。

だから英語サイトは、「日本語ページの英語版」ではなく、「海外のお客様の疑問に答えるページ」として組み立て直します。宿の「らしさ」は、その答えの中に置きます。

料金表示や食事制限の書き方は、連載で個別に書いています。

英語は、どこまで自分で書けばいいのか?

機械翻訳やAIの翻訳は、ここ数年で大きく良くなりました。下書きに使うことは、私も止めません。

ただ、そのまま公開することはおすすめしていません。理由は文法の正しさではなく、説明の順番にあります。

日本語の案内文は、前置きから入り、最後に用件を書くことが多い。英語の読み手は、最初の一文で用件を知りたがります。たとえば日本語の「当館では、お客様に心地よくお過ごしいただくため、大浴場のご利用について以下のお願いをしております」をそのまま訳すと、英語では肝心のルールが3文目まで出てきません。英語では「Tattoos are welcome in our private baths. Our large shared baths ask guests with tattoos to use a cover sticker.」のように、先に答えを書きます。

私は英字新聞の The Japan Times で編集者をしていました。そこで毎日やっていたのは、英語の文を正しくすることよりも、読み手が最初に知りたいことを、最初に置くことでした。英語の案内文で手を入れるところも、多くはこの「順番」です。

自分で書く場合は、次の2つだけ守ると読みやすくなります。

  • 1つの段落で、1つの質問に答える
  • 段落の最初の一文で、答えを言い切る

海外のお客様は、どこで旅館を見つけているのか?

英語サイトを作っても、見つけてもらえなければ読まれません。旅館の場合、海外のお客様との最初の接点は、英語サイトそのものより先に、次のような場所にあることが多い。

  • Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)
  • 旅行予約サイト(OTA)
  • 旅行者の口コミ、SNS
  • AIに「京都で静かな旅館は?」と聞いたときの答え

英語サイトは、こうした場所から「もう少し詳しく知りたい」と思った人が、最後に確かめに来るページです。だから、Googleビジネスプロフィールの英語の説明文と、英語サイトの内容がそろっていることが大切です。説明文の書き方は、こちらにまとめています。

技術的なことを1つだけ挙げると、英語ページは日本語ページとURLを分け(たとえば /en/ の下に置く)、どのページがどの言語版かを検索エンジンに伝える設定(hreflang)を入れておきます。WordPressで作る場合は、多言語化のプラグインでこの設定ができます。

直接予約は、どの画面で決まるのか?

旅行予約サイトは、海外のお客様に見つけてもらううえで欠かせない入口です。そのうえで、直接予約が増えると、宿にとっては手数料の負担が軽くなり、お客様の情報を自分たちで持てるようになります。次の来訪のご案内も、直接できるようになります。

直接予約が決まるのは、たいてい料金と空室が見える画面です。英語サイトでは、次の3点がそろっているかを確かめます。

  1. 英語のページから、2回以内のクリックで予約画面に進めるか
  2. 予約画面も英語で表示されるか(途中から日本語に変わらないか)
  3. 直接予約ならではの利点(たとえば、チェックイン時間の相談や、記念日の準備)が、予約ボタンの近くに書いてあるか

1と2は、作る側が気をつければ防げます。いちばん見落とされやすいのが2です。英語サイトは丁寧に作ったのに、外部の予約システムの画面だけが日本語のまま、ということが起きやすいので、公開前に一度、実際に予約画面まで進んで確かめます。

作ったあと、何を測ればいいのか?

私が仕事の姿勢として大事にしているのは、「主張する人」ではなく「検証する人」であることです。英語サイトが働いているかどうかは、言葉ではなく数字で確かめます。

Googleアナリティクス(GA4)で、最低限次の3つを月に1回見ておくと、手を入れる場所がはっきりします。

  • 英語ページを見た人が、どの国から来ているか
  • 英語ページから予約画面に進んだ人が、何人いるか
  • 予約画面まで進んだのに、予約しなかった人が、どこで止まったか

数字が少ないうちは、増えた・減ったで一喜一憂しません。3か月分を並べて、流れが変わったかを見ます。

まとめ

旅館の英語サイトで本当に伝えたいのは、宿の「らしさ」です。料理、建物、もてなしの細やかさ。それは日本語ページにすでにあります。

足りないのは英語力ではなく、海外のお客様が知りたい順番に並べ直すことと、見つけてもらう場所と予約の画面をつなぐことです。翻訳は、その最後の工程です。

この順番の考え方は、旅館に限りません。飲食店、体験・アクティビティ、小売など、海外のお客様を迎える事業者すべてに当てはまります。

自分の宿の英語ページが、この順番になっているか。まずは「料金に何が含まれているか」が、英語で最初の画面に書いてあるかを見てみてください。

宮崎真一

宮崎真一

ブランドマネージャー・ウェブ解析士

東京都葛飾区で、WordPress制作とウェブ解析を行っています。保有資格は、ブランドマネージャー1級、ウェブ解析士、SEO検定1級、色彩検定3級、生成AIパスポートです。デジタル庁デジタル推進委員、つくば市ワンストップ窓口相談員を務めています。