
「AIツールを使ってみたいけれど、何から始めればいいかわからない」「実際の現場でどう活用されているのか知りたい」そんな声をよく耳にします。
先日のポッドキャスト「AIラヂオ」出演では、私が実際にWordPress構築やWeb制作の現場で使用しているAIツールについて詳しくお話しさせていただきました。
戦略的ウェブ制作工房エル・タジェールでは、複数のAIツールを目的に応じて使い分けながら、効率的かつ高品質なWeb制作を実現しています。本記事では、私が日々の業務で実際に活用しているAIツールについて、具体的な使用場面と活用のコツを詳しく解説します。生成AIパスポート資格を保有する実践者として、現場で本当に役立つ情報をお届けします。
VS Code: すべての始まりとなるエディタ
Web制作の基盤となるのが、Microsoft社が提供するVS Code(Visual Studio Code)です。私のAIツール活用の旅は、このVS Codeから始まりました。VS Codeは単なるコードエディタではなく、豊富な拡張機能によってAI機能を統合できるプラットフォームとして進化しています。
VS Codeの最大の強みは、その柔軟性とカスタマイズ性にあります。WordPress開発に必要なPHP、JavaScript、CSS、HTMLなど、あらゆる言語に対応しており、拡張機能を追加することでAIアシスタント機能を実装できます。コードの自動補完、エラー検出、リファクタリング提案など、基本的な開発支援機能も充実しています。
私がVS Codeを今でも使い続けている理由は、その安定性と信頼性です。大規模なWordPressプロジェクトでも動作が軽快で、複数のファイルを同時に編集する際も快適に作業できます。また、Gitとの統合も優れており、バージョン管理がスムーズに行えるのも大きなメリットです。
初めてAIツールを導入する方には、まずVS Codeに慣れることをお勧めします。基本的な開発環境として使いこなせるようになってから、次のステップとしてAI機能を追加していくのが、スムーズな導入方法だと考えています。
Cursor: JavaScriptの動きとピンポイント修正の強い味方
現在、私が最も頻繁に使用しているツールの一つがCursorです。CursorはAI機能を統合したコードエディタで、特にJavaScriptの動きの追加やピンポイントの修正において威力を発揮します。
Cursorの特徴は、コンテキストを理解した上でのコード生成能力の高さです。例えば、「このボタンにクリック時のアニメーション効果を追加したい」と自然言語で指示すると、既存のコード構造を理解した上で、適切なJavaScriptコードを提案してくれます。WordPress特有のjQuery実装やReactコンポーネントの追加など、複雑な処理も的確にサポートしてくれるのです。
ピンポイントの修正作業でもCursorは優れています。既存のコードに問題がある場合、その部分を選択して「このバグを修正して」と指示するだけで、適切な修正案を複数提示してくれます。これにより、デバッグ作業の時間が大幅に短縮されました。
実際の使用例として、WordPressのカスタムブロック開発でCursorを活用しています。Gutenbergエディタ用のカスタムブロックを作成する際、JavaScriptとReactの知識が必要になりますが、Cursorのサポートがあれば、複雑な実装も効率的に進められます。コードの説明を求めれば、詳細な解説も得られるため、学習ツールとしても有用です。
Cursorを使いこなすコツは、具体的かつ明確な指示を出すことです。「動きを追加して」という曖昧な指示よりも、「ホバー時に0.3秒かけて透明度を80%から100%に変化させるアニメーションを追加して」と具体的に伝えることで、より期待に近い結果が得られます。
Claude Code: 複雑な実装と高度な問題解決のパートナー
最近、私が最も注目し、積極的に活用しているのがClaude Codeです。Anthropic社が開発したこのツールは、コマンドラインから直接Claudeと対話しながらコーディング作業を進められる、まさに次世代のAI開発ツールです。
Claude Codeの最大の特徴は、その理解力の深さと応答の質の高さにあります。WordPress構築において複雑なカスタマイズが必要な場合、例えばカスタム投稿タイプの実装、高度なカスタムフィールドの設定、REST APIのカスタマイズなど、単純なコード生成では対応できない課題に直面することがあります。そのような場合、Claude Codeは単にコードを生成するだけでなく、実装の背景にある設計思想や、なぜそのアプローチが適切なのかまで説明してくれます。
私がClaude Codeを主に使用している場面は、新規機能の実装設計フェーズです。例えば、「ECサイトのWordPress化で、カスタム決済フローを実装したい」という要件がある場合、Claude Codeと対話しながら、セキュリティ面、パフォーマンス面、保守性など、多角的な視点から最適な実装方法を検討できます。
また、既存コードのリファクタリングにもClaude Codeは威力を発揮します。レガシーなWordPressサイトを引き継いだ際、古いコードを現代的な書き方に更新する必要がありますが、Claude Codeは単に書き換えるだけでなく、なぜその変更が必要なのか、どのようなメリットがあるのかを丁寧に説明してくれます。
実践的な活用例として、カスタムテーマ開発でClaude Codeを使用しています。テーマの基本構造から、functions.phpの実装、カスタムウィジェットの作成まで、一連の開発プロセスをClaude Codeとの対話を通じて進めることで、品質の高いコードを効率的に生成できています。
Chat GPT: 多目的な相談相手とアイデア生成ツール
OpenAI社のChat GPTは、コーディング以外の場面でも幅広く活用しているツールです。対談相手の師田さんはGPT-5を使用されているとのことでしたが、私も最新バージョンを積極的に活用しています。
Chat GPTの強みは、その汎用性の高さです。コード生成はもちろん、WordPress構築におけるコンテンツ戦略の立案、SEO対策のアドバイス、ユーザビリティ改善の提案など、Web制作に関わる様々な相談に対応してくれます。ウェブ解析士として、データ分析の解釈やマーケティング施策の検討にも活用しています。
具体的な活用場面として、クライアントへの提案書作成があります。WordPress構築プロジェクトの提案を行う際、Chat GPTに「このような業種・規模の企業に対して、WordPressでどのような機能を提案すべきか」と相談することで、多角的な視点からのアイデアを得られます。もちろん、最終的な提案内容は私自身の経験とデータ分析に基づいて判断しますが、アイデアの引き出しとして非常に有用です。
また、技術的な問題のトラブルシューティングにもChat GPTは役立ちます。WordPressで予期しないエラーが発生した場合、エラーメッセージと状況を説明することで、考えられる原因と解決策を複数提示してくれます。これにより、問題解決までの時間が大幅に短縮されました。
コンテンツ制作の面でも、Chat GPTは強力なパートナーです。ブログ記事の構成案作成、メタディスクリプションの最適化、SNS投稿文の作成など、コンテンツマーケティングに関わる様々なタスクをサポートしてくれます。ただし、生成されたコンテンツをそのまま使用するのではなく、必ず人間の視点で編集・調整することが重要です。
Genspark: ディープリサーチの新しい可能性
師田さんが紹介されていたGensparkは、スライド作成やディープリサーチに特化したツールです。私自身もこのツールの可能性に注目し、実際に試用を始めています。
Gensparkの特徴は、大量の情報を効率的に収集・整理・可視化できる点にあります。WordPress関連の最新技術動向を調査する際、従来は複数のソースを手動で確認し、情報を整理する必要がありましたが、Gensparkを使用することで、このプロセスが大幅に効率化されます。
クライアントへのプレゼンテーション資料作成でも、Gensparkは有用です。業界動向、競合分析、技術トレンドなど、説得力のある提案に必要な情報を迅速に収集し、視覚的に分かりやすい形で提示できます。データドリブンなアプローチを重視する私にとって、このツールは非常に相性が良いと感じています。
ただし、Gensparkで得られた情報は、必ず一次情報源を確認することが重要です。AIツールが提供する情報は便利ですが、最終的な判断は人間が行うべきです。特にクライアントに提示する情報については、正確性を担保するための確認作業を怠らないようにしています。
Figma + Make: デザインワークフローの革新
師田さんが紹介されていたFigmaのデザインツールMakeも、注目すべきツールの一つです。LP構成などの各種資料を自然言語入力でほぼ完成形まで持っていけるという点は、デザインワークフローに革命をもたらす可能性を秘めています。
従来のWebデザインプロセスでは、ワイヤーフレーム作成、デザインモックアップ、クライアントレビュー、修正という段階を経る必要がありました。しかし、Makeのようなツールを活用することで、初期段階のデザイン案を迅速に作成し、クライアントとの認識合わせを早期に行えます。
WordPress構築において、デザインと実装の橋渡しは重要なプロセスです。Figmaで作成したデザインをWordPressテーマとして実装する際、デザインデータの解釈ミスや実装の齟齬が発生することがあります。AIツールを活用することで、このギャップを最小化できる可能性があります。
私自身、Figmaは以前から使用していますが、Makeのような新しいAI機能の追加により、デザインプロセスがさらに効率化されることを期待しています。特に、クライアントとのコミュニケーションにおいて、言葉で説明するよりも視覚的なモックアップを素早く提示できることは、大きなメリットです。
Notebook LM: FAQサイト構築の効率化
対談で紹介されたNotebook LMは、FAQサイトを効率的に作成する小技として非常に興味深いツールです。WordPressでFAQページやヘルプセンターを構築する際、コンテンツの整理と構造化は時間のかかる作業です。
Notebook LMを活用することで、既存の資料やドキュメントから自動的にFAQコンテンツを生成し、適切にカテゴリー分けすることが可能になります。これは、特にコーポレートサイトやECサイトでのカスタマーサポート強化において有用です。
WordPressでFAQセクションを実装する際、カスタム投稿タイプとタクソノミーを使用して構造化することが一般的ですが、コンテンツ自体の作成には依然として時間がかかります。Notebook LMのようなツールを活用することで、コンテンツ生成の初期段階を効率化し、人間はより戦略的な編集作業に集中できます。
ただし、自動生成されたFAQコンテンツは、必ず人間の目でレビューし、ブランドトーンに合わせた調整を行うことが重要です。特に顧客対応に関わるコンテンツは、企業の印象を左右する重要な要素ですから、品質管理を徹底する必要があります。
AIツール活用の実践的なコツ
複数のAIツールを日々使用する中で、効果的な活用のためのいくつかのコツを見出してきました。これらは、私自身の試行錯誤から得られた実践的な知見です。
まず重要なのは、各ツールの特性を理解し、適材適所で使い分けることです。コーディング作業ではCursorやClaude Code、リサーチではGenspark、多目的な相談にはChat GPTというように、タスクに応じて最適なツールを選択することで、効率と品質の両立が可能になります。
次に、AIツールに対する指示は具体的かつ明確にすることが重要です。曖昧な指示では期待通りの結果が得られないことが多いため、「何を」「どのように」「なぜ」実現したいのかを明確に伝えることを心がけています。WordPress構築の文脈を含めて説明することで、より適切な提案が得られます。
また、AIツールの出力を盲目的に信頼するのではなく、必ず人間の目で検証することも重要です。特にセキュリティに関わるコード、パフォーマンスに影響する実装、顧客データを扱う処理などは、慎重なレビューが必要です。ウェブ解析士として、データの正確性と信頼性を重視する姿勢は、AIツール活用においても変わりません。
さらに、AIツールを学習ツールとして活用することもお勧めします。生成されたコードの説明を求めたり、なぜその実装方法が選ばれたのかを質問したりすることで、自身のスキル向上にもつながります。生成AIパスポート資格を取得した際も、AIツールとの対話を通じて多くの学びを得ました。
最後に、AIツールは「パワースーツ」であり、完全な代替ではないという認識を持つことが重要です。AIは強力なアシスタントですが、最終的な判断、戦略的な思考、顧客との深いコミュニケーションは、人間にしかできない価値です。この認識を持つことで、AIツールを適切に活用し、真の生産性向上を実現できるのです。
まとめ: AIツールは選択肢を広げるパートナー
WordPress構築やWeb制作において、AIツールは今や欠かせない存在となっています。VS Code、Cursor、Claude Code、Chat GPT、Genspark、Figma + Make、Notebook LMなど、それぞれのツールには独自の強みがあり、適切に使い分けることで、一人法人でも大きな成果を出せる時代になりました。
戦略的ウェブ制作工房エル・タジェールでは、これらのAIツールを活用しながらも、データドリブンなアプローチと人間ならではの戦略的思考を組み合わせることで、クライアントの真の成功をサポートしています。AIツールは作業を効率化してくれますが、顧客のビジネス課題を理解し、最適な解決策を提案するのは、依然として人間の役割です。
次回の記事では、「AI時代に人間が残すべき価値とは?Web制作者の新しい役割」について、さらに深掘りしていきます。技術は進化しても、人間ならではの価値は不変です。その本質について、一緒に考えていきましょう。
AIツールを活用したWordPress構築やWeb制作について、ご相談やご質問がある方は、お気軽にお問い合わせください。
実践者として、皆様のデジタル成長をサポートさせていただきます。