開催日時:2026年4月9日(木)12:00〜13:00
形式:オンライン(Zoom)/ ランチタイムウェビナー
主催:博報堂DY DIGIFUL BASE「DBケーススタディ」
登壇者:宮崎真一(戦略的ウェブ制作工房 エルタジェール)× 手塚ゆういち(AI講師)
先日、DIGIFUL BASEさんが主催するオンライン勉強会「DBケーススタディ」に、AI講師の手塚ゆういちさんとともに登壇しました。テーマは「AIで変わるウェブ解析とSEOの最前線——『AIO』時代のキーワード探索とコンテンツ改善術」。今回はそのセッションで私がお伝えした内容と、登壇を終えて感じたことをレポートとしてまとめます。

デジフルベースとは?
博報堂DYグループが運営する、フリーランス・副業人材向けのデジタル特化型プロコミュニティです。
プロのデジタル人材が集まり、交流・学習・案件獲得を通じてキャリアとスキルを磨ける「実践型ワークプレイス」として、多くのデジタル専門家に活用されています。
今回のセッションは、DIGIFUL BASEが主催するオンライン勉強会「DBケーススタディ」として開催されました。
デジタル領域で活躍するフリーランスや副業人材の方は、ぜひ登録を検討してみてください。
デジフルベースはこちらから登録できます。
https://top-digifulbase.hakuhodody-one.co.jp/lp2
「ウェブ解析士」そして「顧客行動デザイナー」として伝えたかったこと
私はウェブ解析士・SEO検定1級の資格を持っていますが、今日の仕事を一言で表すとき「顧客行動デザイナー」という肩書きを忘れることはできません。
ウェブ解析は「何人来た」「どのページで離脱した」「コンバージョン率は何%か」という定量的な分析です。一方、顧客行動デザインは「なぜその人はそこで離脱したのか」「何を期待してそのページを開いたのか」という、数字の裏にある人の気持ちと文脈を読む仕事です。
この二つを組み合わせることが、私の仕事の核心です。数字で「どこに問題があるか」を特定して、定性的な視点で「なぜそうなのか・どう改善するか」を設計する。
今回のセッションでも、プロンプトの話より先に、この「AIとの向き合い方の哲学」を手塚さんと掘り下げることを大切にしました。
現場で起きているこんなこと
登壇前に改めて整理したのが、私がクライアントと向き合う中で繰り返し目にする課題です。

ブログ記事をたくさん書いているのに、成果に繋がらない
月4本ペース、1年続けて48本。でも問い合わせはゼロ——。よくあるパターンです。書く前に「誰が、何を求めて検索しているか」を確認していないことが根本にあります。伝えたいことを書くのではなく、読まれるべき人に届く言葉を選ぶ。そこが起点です。

GA4のデータはあるけど「何を見ればいいか分からない」
多くの方がGA4を一度は開いたことがある。でも「何が何だか」という状態のまま閉じてしまう。データはある、でも翻訳できていない。ここが壁です。

キーワード選びや改善判断が、属人的・経験的になっている
「あの人に任せておけば大丈夫」という状態は危ういんです。なぜそのキーワードを選んだのかが言語化されていないと、再現も改善もできない。データで判断の根拠を「見える化」することは、クライアントへの説明責任にも直結します。

データを見ても「アクションを引き出す思考」が訓練されていない
「直帰率80%」というデータを前に「高い、どうしよう」で止まってしまう人が多い。本当に考えるべきは「なぜ直帰しているのか」です。データを読むことと、データからアクションを導くことは、別のスキルなんです。
これらに共通するのは一つの構造です。「データはある。でも”そこから何をするか”という判断が弱い。」 AIはその間を埋めてくれる存在です。
AIを使ったキーワード探索——「実際に来ている人の声」を拾う
セッションの中で特に反応が良かったのが、キーワード探索でのAI活用です。
従来のアプローチの弱点は二つあります。一つは、キーワードプランナーなどのツールが「みんなが検索しているキーワード」、つまり競合も同じく狙っているレッドオーシャンしか出してこないこと。もう一つは、「自分のサイトに実際に来ている人が何を求めているか」がツールには映らないことです。
私がやっているのはこうです。Google Search Consoleのクエリデータをそのまま AIに渡す。そして聞くのはシンプルに、「このクエリ一覧の中で、まだコンテンツが薄そうなテーマはどれだと思いますか?」——それだけです。
具体的な事例を一つ。 あるクライアントの工務店さんのケースです。クエリデータをAIに渡したところ、「○○市 リフォーム 築30年」「リフォーム 費用 築古」という複合クエリが地味にインプレッションを集めているのに、対応するコンテンツが1本もないことが判明しました。検索ボリューム自体は小さいので、キーワードプランナーでは絶対に浮かび上がらない。でも実際に来ているということは、そのニーズを持つお客さんが実在するということです。AIはその「小さいけどリアルな需要」を拾ってきてくれます。
さらに、既存記事の情報も一緒に渡すと精度が上がります。クエリだけだとAIは推測しかできませんが、記事タイトルや概要も加えると「クエリに対応するページがない」という照合ができるようになります。
ただし、AIが出してくる提案10個のうち自分のビジネスに合うのは3〜4個です。「うちのお客さんじゃない」と判断して捨てる作業は人間がやる。AIを使いこなすほど、自分のお客さんを深く理解していることが問われる——これが私の実感です。
データとAIで改善の優先度を決める3ステップ
コンテンツを作ったあと、どこから手を入れるか。その判断にもAIを活用しています。
- STEP1「データでシグナルを読む」
- 私は今、ClaudeとGA4をMCP(Model Context Protocol)で連携させています。CSVのエクスポートや貼り付けの手間なく、「セッション数が多いのにコンバージョン率が低いページを教えて」とClaudeに話しかけるだけで、GA4のデータを直接取得して答えてくれます。ここで必ず見つかるのが「月1,000セッションあるのに、お問い合わせボタンのクリックがゼロ」というページです。アクセスがゼロのページより、「見られているのに動かない」ページのほうが、修正したときの成果への直結度が高い。
- STEP2「AIに相談する」
- MCP連携しているので、そのままClaudeに「このページ、なぜ問い合わせに繋がっていないと思う?仮説を出して」と続けるだけです。AIは「CTAボタンがスクロールしないと見えない位置にある可能性」「ページが情報提供で終わっていて次のアクションへの導線が弱い可能性」といった仮説を複数出してきます。大事なのは、これは「答え」ではなく「仮説」だということです。私一人で考えると一方向にしか進まない思考が、AIによって複数の角度から照らされる——この視野の広がりが最大の価値です。
- STEP3「提案を参考に改善する」
- AIの仮説をすべて実装するわけではありません。「検索意図とのズレ」という仮説が出ても、「このページは既存客向けだから」と判断して捨てることもある。「CTAが見えない」はスマホで確認して事実ならすぐ直す。「AIの仮説」×「自分の事業文脈」でフィルタリングして、手を動かすことに集中する——それがこの3ステップの本質です。
AIO時代のSEOの本質——「順位を取る」から「引用される存在になる」へ
セッションを通じて一番伝えたかったのが、ここです。
AI Overview(AIO)の登場で検索体験が変わりました。ユーザーが検索した結果、GoogleのAIが「答え」を生成して表示する。サイトへのクリックが発生しないケースが増える。検索流入数が減っているのに「SEO失敗した」と焦る方が増えています。
でも私の見立ては逆です。ウェブ解析の価値は、むしろ上がっています。 検索流入「だけ」を見ていると現実が見えなくなる。SNS、メルマガ、直接流入など複数の流入経路を横断して「ユーザーの行動」を理解することが、今こそ必要です。
そして、これからのSEOで本当に重要になるのは二つのことだと確信しています。
レピュテーション(評判)——「あの人が言っているから信頼できる」「あのサイトは専門家として認知されている」という評判の積み上げ。これは一朝一夕にはできない長期的な資産です。
サイテーション(言及・引用)——メディアや他サイト、そしてAIが回答を生成するときに「引用元として選ばれる」こと。
この二つには因果関係があります。レピュテーションがあるからサイテーションされる。 評判という土台があって初めて、AIや検索エンジンに「引用に値する情報源」として選ばれる。「検索順位1位を取る」という発想から「引用される存在になる」という発想への転換——これがAIO時代のSEOの本質です。
AIとの役割分担——「ゴルフ」で例えるとこうなる
登壇の中で、受講者の方に一番刺さったかもしれない例えがこれです。
AIとの関係はゴルフに似ています。コースを読んで「ここは7番アイアンで攻めよう」とクラブを選ぶのは人間です。コンテンツの方向性を決め、誰に何を届けるかを設計する——それが人間の仕事です。
ボールを打つのはAI。下書きを書く、仮説を出す、データを分析する。そこは任せていい。
でも、グリーンに乗ってから最後のホールインまでは、人の手でやる。クライアントへの説明、判断の根拠の言語化、「この方向で進めましょう」という意思決定。その最後の一打を入れるのは自分です。
結局、データドリブンで成果を出している人と出せていない人の差は、ツールの差ではありません。「続けるかどうかの意思の差」です。 AIを使いこなすより前に、データを見る習慣を持てるかどうか。それが一番大事なことだと、今も変わらずそう思っています。
登壇を終えて
今回のセッションは、手塚さんというAI講師の視点との対話があったからこそ、より深い議論ができました。「AIを怖いと感じている方も、すでに使っている方も、AIは人間の判断を代替するのではなく、人間の判断を良くするためにある」——そのことをひとりでも多くの方に届けられたとしたら、登壇した甲斐があります。
事前質問も7問と充実していて、参加者の皆さんの「AIOとLLMOの違いは?」「KnowクエリはBuyクエリに置き換えるべきか?」「AIが考えない部分で人間がすべきことは?」という問いに、正直に向き合う時間になりました。
検索環境がどれだけ変わっても、「誰かが何かを知りたい・解決したい」という人間の行動は変わりません。それに寄り添うコンテンツを作り続けること、そしてデータでその成果を確認し続けること——その姿勢は、AIOが来ても変わらない。
今後もこういった登壇・勉強会の機会があれば、積極的に参加していきます。

