はじめに ― なぜこの記事を書いているか
2026年4月26日、Chiba WordPress Meetup に参加してきました。
登壇されたのは Automattic 日本パートナーシップマネージャーの花森 海音(はなもり かいと)さん。テーマは「世界のWordPress教育プログラムが日本上陸 ― Automatticの取り組みとオープンソース教育の未来」。
…正直に言うと、参加前は「最近のWordPressアップデートの話かな」くらいの気持ちでいました。ところが、いざ始まってみると、内容は完全に 「これから日本のウェブ教育がどう変わっていくか」 という、もっと大きな射程の話でした。
私はWordPressが大好きです。エル・タジェールという屋号で、データドリブンなWordPress構築・運用支援を生業にしている身として、WordPressというオープンソースが「次の世代にどう手渡されていくか」は、自分の事業のコアにある問いでもあります。
そして話を聞きながら、ある一点でずっと胸が騒いでいました。
これ、私の母校・立教大学でも実現したい。
このブログは、ミートアップの内容レポートでありながら、もう一つの目的は 立教大学関係者の方へのお声がけ です。最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
花森海音さんという人
冒頭、花森さんのキャリアが紹介されました。これがまず、ご本人の説得力の土台になっています。
- 2013〜2017 北海道大学・北海道科学大学・北海学園大学で大学講師
- 2014〜 WordPressユーザー
- 2019〜 コミュニティメンバー
- 2023〜2024 WordPress Trainingチーム グローバル代表
- 2025〜 Automattic 日本パートナーシップマネージャー
「教育の現場」と「WordPressプロジェクトのトレーニング設計」と「日本市場でのパートナー開発」が、一人の人格の中でつながっている方。話の説得力が違いました。
全体像:WordPress公式の教育プログラムは「3つの輪」になっている
花森さんの整理は明快でした。WordPress公式の教育プログラムは、重なり合う3つの輪で構成されている、と。
- WordPress Credentials(認定試験・資格)
- AI Leaders(マイクロ・クレデンシャル)
- 教育機関連携プログラム(Campus Connect / Credits / 学生サークル)
ここから3つを順に整理します。
1. WordPress Credentials ― 公式の認定試験、ついに登場
2026年2月20日、Certified Advanced Professional WordPress Developer(WordPress上級開発者認定試験)がローンチしました。
WordPress公式の認定試験は、これが史上初です。
ポイントは、試験のメッセージにあります。スライドにはこう書かれていました。
「コードが書ける、じゃない。実務で判断できるか、だ。」
評価軸は3つ。Scalable(高パフォーマンスで負荷に強い)/Maintainable(保守しやすく長く運用できる)/Secure(守れるコード・守れる設計)。手を動かせるかではなく、設計判断ができるかを測る。受託でWordPressを納品している私のような立場には、ものすごく刺さる設計思想です。
- 推奨経験:WordPress開発3〜5年
- 試験言語:英語(技術用語中心)
- 受験形式:オンライン or テストセンター(東京・大阪に設置済み)
ロードマップとして、現在は上級・英語版のみ。初級・中級は開発中、多言語展開(日本語含む)は予定とのこと。今後、日本のWordPress開発者の「市場価値の証明」のスタンダードになっていくはずです。
詳しくは → learn.wpvip.com/certification
2. AI Leaders ― 「使う」を超えて、「作って届ける」へ
ここが個人的に一番衝撃を受けたパートです。
AI Leaders は、2026年2月4日に発表されたばかりの、WordPress財団主導の初の公式AI教育プログラムです。
カリキュラムは合計40時間。前半20時間で「生成AIリテラシーの実践基礎」(プロンプト・評価検証・倫理・ワークフロー設計)、後半20時間で「WordPressでの実装」(自分のためのAIから、社会に届けるAIへ)。最終的に学習 → 認定 → 就職まで一気通貫でつながる設計になっています。
設計思想として強調されていたのが、
- 汎用性:特定のAIツールに依存しない
- 継続性:オープンソースだから、修了後もライセンス費ゼロ
- 実装性:WordPressで「作って届ける」までを責任範囲に
私は 生成AIパスポート資格 を持っています。だから余計にハッとしたのですが、花森さんは「AI LeadersはGUGAの生成AIパスポートとは違うレイヤーにある」と明確に整理されていました。
| 生成AIパスポート | AI Leaders | |
|---|---|---|
| 運営 | 一般社団法人GUGA | WordPress財団(非営利) |
| 対象 | 社会人・企業研修 | 教育機関・地域・学生 |
| 目的 | リスク予防・知識証明 | 実装力育成・就職接続 |
| 形式 | 60問60分の試験 | 40時間カリキュラム+認定 |
「知っている」と「作れる・届ける」の間を埋めるのが、AI Leaders。
このメッセージは、自分の仕事の言語化としても使えるくらい本質的でした。
すでに米国のイリノイ大学シカゴ校(UIC)で第1期パイロットが進行中(2026年6月修了予定)。さらに、米国連邦の大統領令、ルイジアナ州教育委員会、中国の小学校AI教育義務化など、AI教育は完全に国家レベルの議題になっています。
そして日本も、2025年12月23日に「人工知能基本計画」が閣議決定。さらにミートアップのわずか2日前、2026年4月24日にガバメントAI「源内」がGitHubでOSS公開されました。
制度 × 国の意思 × 開かれた実装基盤 ─ レールはもう、敷かれている。
このスライドの一文、しばらく忘れられそうにありません。
3. 教育機関連携プログラム ― ここが今日一番、自分ごとに響いた
公式の教育プログラムは、入口が3層に分かれています。
- WordPress Credits(授業・学期単位/50〜150時間の貢献を伴走支援)
- WordPress キャンパス・コネクト(短期イベント/1日完結)
- WordPress 学生サークル(継続活動)
2025年のWordPress Credits実績は、導入教育機関8校・登録学生99名・関与メンター50名・スポンサー企業6社。Pisa大学(イタリア)、Fidélitas大学(コスタリカ)、Krakow工科大学(ポーランド/2026年度から必修授業として導入)といった事例が紹介されました。
そして本記事の主題に関わるのが Campus Connect です。
Campus Connectとは ―「1日でOSSと出会い、作って、発表する」
Campus Connectは、教育機関で1日かけて開催する短期イベントです。
午前(座学) … オープンソースCMSとしてのWordPress/コミュニティ紹介/キャリア例
午後(実践) … 最初のウェブサイト構築/学生プロジェクト発表
特徴は、文系・理系を問わない参加設計であること。1日(10:00〜16:00)が基本で、半日や複数日構成もあり。制作物も、1ページサイト/ポートフォリオ/教育機関サイトの再現・改善/サークルサイト等、柔軟に組めます。
そして注目は、日本初のCampus Connectが、もう決まっているということ。
2026年5月9日(土)、日本経済大学STATIO(渋谷駅直結)で開催
高校生・大学生・専門学校生 30名・参加費無料
AM スタートアップ思考 / PM WordPressでMVP制作
申込み → campus.wordpress.org/tokyo/Japan-University-of-Economics/
すでに世界8カ国 × 28提携機関 × 2,600名以上が参加してきた仕組みが、いよいよ日本に上陸する。これは大きな節目です。
WACA × Automattic ― ウェブ解析士として、ここは絶対に書きたい
私は ウェブ解析士 の資格保有者です。だからこそ、ミートアップで一番テンションが上がったのが、
「Automatticは、一般社団法人ウェブ解析士協会(WACA)と業務提携している」
というスライドでした。
協働の構図はこうです。
- Automattic:共同企画/学生プラン/グローバル接続
- WACA:教員ネットワーク/授業設計/カリキュラム提供
- 教育機関:学生募集/会場/授業としての位置づけ
- コミュニティ:講師/メンター/継続接続
「ウェブ制作の本質である表現を授業に加える」(WACA)と、「誰もが発信できる世界へ」(Automattic)。この2つの理念が握手しているのが、本当に良かった。私自身、ウェブ解析士として培ってきた「データに基づく表現」と、WordPressの「発信の民主化」が同じ机の上に乗ることに、強く納得感を覚えました。
母校・立教大学で、Campus Connectを実現したい
ここからが、この記事の 後半の本題 です。
花森さんのお話を聞きながら、ずっと頭の中で母校の風景が蘇っていました。立教大学は、人文学・メディア・経営・社会など、「発信」と相性のいい学部を多く擁しています。WordPressという「発信の民主化」のためのオープンソースは、立教の学風と本質的に親和性が高いはずです。
WordPress Creditsの2025年実績で、単位認定された学部は 人文学/メディア・デザイン学/理工学 の3学部。立教大学にも、当てはまる学部・学科がいくつもあります。
私は、立教大学で Campus Connect を実現したいと本気で思っています。
ただ、これは私一人では絶対にできません。教育機関側の窓口、教職員、学生団体、OB/OGネットワーク ― そういった「中の人」とのコネクションが必要です。
立教大学関係者の皆さまへ ― ご相談・ご紹介をお願いできませんか
この記事を読んでくださっている方の中に、もし以下に当てはまる方がいらっしゃったら、ぜひお声がけください。
- 立教大学の 教職員 の方
- メディア社会学科・経営学部・社会情報学・データサイエンス領域などの先生にお繋ぎいただける方
- 立教大学の 学生団体・サークル(特にプログラミング系・メディア系・起業系)に関わる方
- 立教大学の OB/OG で、人事・産学連携・学生支援の窓口にお心当たりのある方
- 「Campus Connectやってみたい」と思った他大学の関係者の方(立教以外でも全力でご協力します)
何ができるかというと、
- 企画書作成:花森さんの公開資料と公式テンプレートをもとに、立教大学版Campus Connectの企画書を私が書きます
- 当日運営支援:ウェブ解析士として、当日の講師・メンターとして入ります
- 学生用WordPress環境:WordPress.com学生プラン(在学中無料・WAF・自動パッチ・データベース無制限)が標準で使えます
- 継続支援:エル・タジェールとして、開催後の伴走(学生作品のレビュー・キャリア相談)まで責任を持ちます
「相談だけでもOK」とのことだったので、まずはお話を聞かせてくださいというスタンスで構いません。
ご連絡は、エル・タジェールのお問い合わせフォーム、または https://shinichi-miyazaki.website からお願いします。
次の対話の場 ― 産総研AITeC(2026年5月8日)
花森さんは、2026年5月8日(金)16:00〜17:00 JST、産総研人工知能技術コンソーシアム(AITeC)で再度登壇されます。テーマは 「自分のためのAI」から「社会に届けるAI」へ ― WordPress AI Leaders と日本版構築への招待。オンライン・無料です。
産・学・官の関係者向けですが、AI教育の実装に関心がある方ならどなたでも。私もオンラインで参加予定です。
申込み → aitconsortium.doorkeeper.jp/events/196658
まとめ ― 4つの柱は、一本の線でつながっている
花森さんが最後にまとめたメッセージが、強く残りました。
Credentials(可視化の入口)/ AI Leaders(AI時代の実装)/ 教育プログラム(学び→貢献→継続)/ 日本(実装フェーズへ)
― この4つは別物じゃない。一本の線で、つながっている。
そして、こう締めくくられました。
今日の学び手が、明日のメンターに。
私自身、WordPressに学ばせてもらってきた立場です。デジタル庁デジタル推進委員として、つくば市ワンストップ窓口相談員として、ウェブ制作の現場で、たくさんの方から学んできました。次は、それを学生に手渡す側に回りたい。
そのための具体的な一歩が、立教大学でのCampus Connect実現です。お力を貸してくださる方、ぜひご連絡ください。一緒にやりましょう。

